ネクタイ


「依織くん、ネクタイしてる……」
 着物の生活に馴染んでいるためか、胸元が開いてる服を好んできている依織のネクターとスーツという姿にむぎはキョトンとする。
「今度の携帯のCMでね。スーツを着ることになったから、馴染んでみようと思って」
「スーツ姿も格好いいね〜。えーと、リーマン萌えっていうんだっけ?」
「すず、その言葉は何処で?」
「えーとね、利安さんが世の中にはそういうジャンルがあるんだって。読んだことはないけど」
「そう……」
 この少女の美徳は素直なところだけれども、時々とんでもない知識を仕入れてきたりもするから、色々と大変なのである。
「でも、普段締めないからなかなか難しいね」
「そうなの?」
「手先が不器用なだけ人だけが、ネクタイが苦手だと思う?」
「一哉くんは純粋に不器用なだけでしょ? 貸して、やってあげる」
 無邪気で素直なところが美徳であるが、恋人と二人きりのときに他の男の名前を出すのもどうかとは思う。
「じゃあ、お願いできるかな」
「うん」
 慣れた手つきでネクタイを締めてくれる恋人はとても可愛らしい。そして、結構追い市アングルであることに気づく。
(夏も結んでいたっけ……)
 露出度の高い服を着ていた頃を思い出す。麻生は真っ赤になって何とかしろといっていたのを聞き流していたが、これはこれで重要な問題のような気がする。今もデコルデが大きく開いたセーターを着ていて、胸元が見えそうで見えないチラリズム。これは結構男心をそそるものである。夏のあのキャミソールだと、鎖骨だの胸元だのを観察しほうだいだったろう。
(アロママッサージもやっていたっけ……)
 無防備な恋人にセクハラまがいをかましてたことを今更ながらに思い出し、ちょっと色々と思うところが出てくる。実際、一哉はむぎの好意を抱いていたのだ。今は保護者代わりのポジションを得ているが、それもそれでまぁおも輪ないと頃がないはずもない。
「はい、できた。格好いい、依織くん」
 無邪気なのも罪ではある。こんなに可愛い恋人を目の前にし、二人きりでの美味しい状況。
「そうかい?」
「うん♪ こんなに格好いいスーツ姿の人、あたし見たことない♪」
 言ってから、真っ赤になる姿もかわいくて仕方ない。本当に愛しい。
「そうかい? そう言えば、知っている? ネクタイには結構使い道があるんだよ?」
「使い道?」
 あどけなく首をかしげる姿も可愛い。そして、信じやすいのは美徳ではあるが、狼の前ではかまどをしょってやってきた子羊にもみえてしまう。
「結構、色んなシチュエーションで使われてるんだけど、ね」
「え〜。パッチワークとかじゃなくて?」
 家庭的なむぎらしい言葉に依織は魅惑的に微笑を浮かべ、シュルリ…とネクタイを解く。
「依織くん?」
 戸惑うむぎの両腕を掴むと簡単にネクタイで一まとめにしてしまう。
「え? な、何なの?」
「だから、ネクタイの使い道だよ。そうだね、利安さんが言っていたリーマンものにもあるんじゃないのかな? まぁ、男同士の恋愛はどうでもいいけど。僕はすずで試したいんだよ」
 そう言うと、腕を縛られたままの状態のむぎを引き寄せて、口付ける。驚いて、何かを言おうとする開いた唇に舌を滑り込ませて。唇もまた性感帯の一つであり、むぎの弱いところを熟知している依織は弱いところを何度も舌先で掠めてはむぎの抵抗を奪っていく。
「あ……」
 とろんと蕩けた眼差しに満足そうに微笑むと、依織はむぎを抱き上げて、寝室へと運んでいく。
「ね、解いて……」
「駄目だよ。使い道を教えてあげるんだから」
 にっこりと微笑むと、むぎの服をたくし上げ、白い肌をさらしていく。フルリと揺れる胸の先端にためらうことなく口付けて。
「あ、やぁ……」
 甘い声が上がる。身をよじろうとするが、縛られた腕、たくし上げられた服のために身動きは取れないまま。依織に与えられる刺激にただ酔いしれるしかないままに。
「こういうシチュエーションもあるってこと、覚えてくれた?」
「や、知らない……」
 与えられる刺激に甘い声をあげるしかできない恋人にクスリと笑って、依織はその唇にキスを贈った。

ネクタイって、いおりんが締めなさそうなんで、生みの苦しみをたくさん味わったorz