Early Birthday
普通の女子高生だったエンジュが伝説のエトワールとして、新宇宙の発展に協力し始めて、もうすぐ一年。様々な出会いをももたらした一年だった。途中、サクリアの政令がもたらす試練などもあったが、これもまた乗り越えて。今はレイチェルの命を受けて、宇宙を飛び回っている。どの日々ももうすぐ終わる。
「もうすぐ、かぁ……」
指名の終わる日はどういう運命なのか、誕生日当日。これもまた、何だかなぁとは思う。去年は家族や友人に祝福してもらった誕生日だけれども、今年はそうは行かない。エトワールの氏名が終わる最後の日、だ。そうしたら、うちに帰る準備で終わってしまうだろう。
(それでも、楽しかったしね……)
エトワールとして、宇宙を駆け巡る日々は大変だったけれど、終わってしまう日を控えてる今ではどれも楽しかった思い出になってしまう。ある意味、この時間こそが、神様のくれた誕生日プレゼントなのかもしれないと、も。宇宙を駆け巡るひびなんて出来る女子高生なんて、めったにいない。まして、宇宙をつかさどる女王や守護聖に関われるだんて。そこまで、考えて、エンジュは首を振る。これ以上の幸福なんてない。きっと、この一年はこれからの人生の中で星のようにいつまでも輝き続けるのだ。それなら、今を精一杯楽しむだけ、だ。
「さ、感傷やめて。今日も頑張ろう!」
エトワールは星を表す言葉。感傷的に輝く星なんて、意味がない。きらきら輝いていなければ。そう自分に気合を入れて、今日もエンジュは鏡に向かって、微笑んだ。
レイチェルの命を受けて、エンジュが向かったのは、イキサナ星系、惑星マヤンナだった。どこか故郷に似たこの星をエンジュはとても気にかけていて。サクリアの流現に他の星系に言った時は結構立ち寄ったりもしていた。
アウローラ号を降りて、視察に向かう。発展の状況を見て報告するのも、エンジュの大切な仕事だ。実際、サクリアを受けて、荒野だった惑星が発展していく様子を見るのは楽しい。きっと、この宇宙は自分たちが育った宇宙のように立派に成長していくのだろう。それを見ていられる時間を与えられただけでも本当に自分はラッキーガールだったとエンジュは思う。
[レディ……?」
「え?」
不意に声をかけられて、エンジュは反射的に振り返る。エンジュを”レディ”と呼ぶのは、彼女の知る限りただ一人。聖獣の宇宙の闇の守護聖、フランシスだ。
[フランシス様も視察ですか?]
「ええ。レディ…もですね?」
守護聖は宮殿にいることだけが仕事ではない。時には惑星に降り立ち、その状況を自分の目で見に行くこともある。
[頑張っておられますね」
「ええ。残り時間は短いから、精一杯やるだけです」
繊細で優雅なこの人ともやがて別れる日がやってくる。それは少し切なくて、胸が痛む。その旨の痛みの正体をエンジュはまだ気づいていない。
「レディはこの惑星には今日?」
「はい。今、ついた所なんです。今から、視察です」
[それはラッキーですね」
「え?」
戸惑うエンジュの腕を掴むと、そのままフランシスは歩き出した。
「どうぞ、レディ」
連れてこられてのは、色とりどりの花を扱う花屋の前。
「レディに似合う、今の季節の花をまとめてください」
「わかりました。しばらくお待ちください」
呆然とエンジュはフランシスを見上げる。フランシスの意図がまったくわからない。やがて、花屋の店主がフラワーバスケットのアレンジメントを持ってきてくれた。
「どうぞ、お嬢さん」
「は、はい」
差し出されたフラワーバスケットを反射的にエンジュは受け取る。秋の花はどちらかと言うと大人しめの花が多いが、それを感じさせないアレンジメントになっている。
「レディによく似合います。ありがとう」
そう言って、代金を支払うと、「行きましょう、レディ?」とエンジュをまた引っ張っていった。
連れて行かれた小さなカフェに入り、ようやくエンジュは人心地ついた。クラシカルな雰囲気のその店はフランシスによく似合う。
「あの、どうして……」
どうして、フランシスがこんな風に贈り物をしてくれるのかと、ようやく問いかけられる状況になったエンジュは素直にそうたずねる。
「ああ。それはレディ。この星では今日があなたのお誕生日なのですよ」
「え……」
聖地とその外の宇宙では時の流れが違う。それはわかっていたことだ。だが、こうして言われると、きょとんとしてしまう。
「一足早いバースデープレゼントです」
「ありがとうございます……」
フランシスの気遣いがとても嬉しい。自分の誕生日を覚えてくれていたことに対しても。
「レディ。もう少しだけ、時間をください。あなたの本当の誕生日までには、私も……」
「え?」
「いえ。何でもありません……」
言いかけた言葉を飲み込んだフランシスにエンジュは小首をかしげた。
フランシスの言葉の意味をエンジュが知るのは、18歳の誕生日を迎えた日の翌日となる……。
初めて書いたのがこういう話って言うのはどうかと、私……。いや、誕生日、自分設定なんで。自分へのBDプレゼントに……。
フランシスが偽者で、すみません……。エンジュは彼相手だと、男らしい方が好みですw
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