Diary



「お兄ちゃんの誕生日のお祝いをするから、来てね」
 という、美奈子から可愛いお誘いを受けたのは十月も末の頃。
「ああ、わかった」
 当然、炎が受けないわけがなくて。小さな約束は祝われる当人にバイトの日を空けておくという、強制力をも着いたのである。
「……で、何にしよう」
 誕生日が近づくに連れて、迷うのは贈り物。あまり高いものは手が出せない。美奈子は手編みのマフラーにすると言っていた。
「あいつには実用品が一番だよな……」
 一人頷いて、ふと、文房具屋をのぞく。すると……。
「あ…これ、時期的にもいいよな」
 不意に目にとまったものを手に取り、炎は一人頷く。そして、レジに向かっていった。

 そして、誕生日当日。大学は一緒でも学部が違うため、なかなか会うことはない。
「竜は…っと……」
 竜を探し回っていると、
「刃柴なら…あっちの講堂だぜ」
と、声をかけられる。
「サンキュー」
 その言葉に従って、行ってみると、竜の後ろ姿。
「竜!」
「……炎」
 振り返り、立ち止まった竜に追いついて、炎は満面の笑顔。
「この講義受けたら、帰るんだろ? 俺も次の講義終われば帰るから、一緒に帰ろうぜ」
「……ああ、そうだな」
 誕生日のお祝いをするから…と、美奈子にバイトは入れるなと釘を刺されていた。そして、炎と一緒に戻ってきてね…とも。
「じゃ、これ。プレゼント…な」
 ポン…と差し出された小さな包み。
「実用品だからな。大事に使えよ。じゃ、俺、次の講義があるから」
 言うことだけ言うと、炎はそのまま走り去ってしまう。
「台風みたいなやつだな……」
 クスリ…とつい、笑みを漏らしてしまう。一足先に、二十歳になったと言うのに、あんなところは全然変わっていない。
「しかし…何をくれたんだ……?」
 包みは掌に乗るくらいのもの。そして、薄い。
 パサリ…開けてみると……。
「手帳……?」
 小鳥の写真が表紙のダイアリー。中もカラーの小鳥の写真。開けてみると、中にメモが挟まっている。
『HAPPY BIRTHDAY! いつまでも謎のままじゃなくて、奥付に住所くらい書いとけよ』
「まったく…あいつは……」
 苦笑しながら、竜は手帳をめくる。使い勝手はなかなか良さそうだ。パラパラと捲ると、不意に竜の手が止まる。
「……あいつらしい」
 ダイアリーの中に書き込まれた予定。七月の炎の誕生日と、来年の今日の誕生日。二人が始めて出会った日。そして…ダグ
オンになった日などが、勝手に書かれている。

「こんなものじゃ…埋まらないってことをわかってないのか。あいつは……」
 妹以外の他人と接することを厭っていたはずの自分が、いつしか特別に思う存在になった。それが炎。炎がくれた毎日はどれ
もが特別なものだと言うのに。そして、これからも。

「ま…ありがたく使わせてもらうとするか」
 ポケットの中にダイアリーを入れると、竜は笑みをこぼす。一年後にはこのダイアリーにはどんなことで埋まっているのか…
などと、思いながら……。

ああ、また、手短に書きました。悩んだのはプレゼントの内容。で、毎年、友人がダイアリーをくれてたので、こうなりました。
システムはあんまり好きじゃないんで、ついつい、1年物に走る私……。