小熊と指輪


 3月の半ばのある日、金の髪の女王候補、アンジェリークの元に小さな小包が届けられた。
「クラヴィス様からだ……」
 添えられたカードに書かれているその名に多少の戸惑いを見せる。今日は3月14日。世間で
言うところのホワイトデーだ。
「お返しなのよね……」
 バレンタインにチョコレートは渡せたことは渡せたらしい。らしい、というのは、チョコレートに
入れたブランデーのせい。少しでも美味しいものを、と考え試食するうちに酔っぱらってしまって、
そのままクラヴィスの元に向かったらしい。その時の記憶はまったくなくって。気がついた時には
森の湖でクラヴィスに膝枕までさせていた。忘れたしまいたいようで、忘れたくない複雑な思い出だ。
「……意味、持たせられてたのかなぁ」
 本命のチョコレートだからこそ、頑張ったのだけれども。どうやら、空回りしてしまった気がする。
多分、この小包もリュミエールが気を利かせてくれたものだろう。自分がクラヴィスの立場なら、
酔っ払いからもらったチョコレートが本命とは考えられない。
「私って馬鹿だ……」
 ため息をついて、うつむいてしまう。涙がこぼれそうになるけれど、自業自得だから仕方がない。
小包に涙が零れ落ちそうになって、アンジェリークは慌てて目をこすった。
「お礼、しなきゃ……」
 そのためには小包を開ける必要がある。ゆっくりと、小包を解くと、丁寧にラッピングされた小箱が
入っている。包装紙も丁寧に取り除き、箱をあけて見ると、中には熊のぬいぐるみが入っていた。
「やだ、可愛い……」
 その可愛さに思わず、箱から抱き上げて出してみると、パラリと一枚の便箋がテーブルに落ちる。
「“気に入らなかったら、捨てるがいい”って、クラヴィス様が買ったのかしら……」
 どう考えても、思いつかない取り合わせに、思わずまじまじと見つめると、ぬいぐるみは小さな箱を
抱えている。何も考えずに小箱を開けると、そこには指輪が入っていた。石はエメラルドグリーン。
アンジェリークの瞳の色、だ。
「嘘……」
 思わぬプレゼントにアンジェリークは呆然とする。熊のぬいぐるみだけでも、かなりの驚きだった
のに、こんなプレゼントまであるなんて。
「私、期待してもいいのかなぁ……」
 指輪のサイズもぴったりで。嬉しくって、つい笑顔になってしまうあたり単純だと思わないことも
ないけれど。嬉しいものは嬉しいのだから、仕方がない。アンジェリークは指輪にそっと口付けを
落とした。


リモ〜。しかし、指輪はともかく、熊のぬいぐるみと闇様はちょっと結びつかない……。

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