As time goes by
カーテンの隙間からこぼれる朝日にアンジェリークの瞳はパチリ…と開く。
「ん……」
身体を大きく伸ばして、カーテンを開ける。外は快晴。雲一つない青空が広がっている。
「わぁ、良い天気」
満足そうに笑顔を見せると、手早く着替えて、アンジェリークは部屋を後にした。
「アンジェ、いないのか……?」
早朝の剣の訓練を終え、シャワーを浴びてから少女を起こすのが日課になってる青年はいつも 通りに起こそうと
声をかけたが、返事がない。ベッドを見ると、抜けのからである。
「…珍しいこともあるもんだ」
いつもなら、三段階の起こし方をしている。一段階は声をかける。二段階は毛布を剥ぎとる。
三段階目は……。
「あ、おはよう、アリオス」
ぱたぱたとかけてくるアンジェリークにアリオスは戸惑った顔。
「どうしたの、そんな顔して」
「いや…いつもなら、ここまでしないと起きないだろう?」
そう告げると、少女を引き寄せて、その唇を塞いでしまう。大抵の朝は、これで少女を起こ している。
「もう〜」
朝のキスとしては少しばかりきついそれにアンジェリークの顔が真赤に染まる。
「今日は約束してたでしょ。ピクニックに行くって」
「ああ…そう言えば」
最近、女王としての仕事が忙しいせいか、どことなく調子が悪いアンジェリークに外の空気を吸わせようとアリオスが
強引にこの日の曜日に連れ出すと言い出したのだ。
「だから…お弁当作ってたの」
「んなもん、厨房の連中に任せりゃいいじゃねえか」
「だって…せっかくのデートだもん」
そう言って、少しばかり拗ねた顔が可愛くて、ついついその柔らかい髪を撫でてやる。
「悪かった……。でも、身体はいいのか?」
「大丈夫よ、今日はすごく気分がいいし」
「じゃ、着替えて行くか」
「うん」
はしゃいだ笑顔はアンジェリークを年相応の少女に見せる。その表情に、アリオスの心も
穏やかなものになる。まるで魔法のように。
向かったのは聖地の宮殿から少し離れた丘。気候もいいし、ピクニックには最適の場所で ある。アンジェリークは
ゆったりしたコットンのワンピース、アリオスはコットンのシャツに ジーンズといった出で立ち。どう見ても、この宇宙を
司る女王とその傍に居る者には見えない だろう。
「風が気持ち良いね……」
「そうだな……」
丘にある大樹の下に二人レジャーシートを敷いて、座る。穏やかな風が少し汗ばんだ身体に 心地よくて。
「お弁当にしようか」
「ああ……」
バスケットから取り出したのはサンドイッチとフライ度チキンやポテト、サラダなど。
「おいしい?」
「ちゃんと食えるもん作れるんだな……」
「ひどーい。じゃあ、食べなきゃいいじゃない」
「まずいとは言ってないだろうが」
などと語り合いながら、しっかりと残さず全部食べて。
「お腹いっぱい……」
木にもたれながら、アンジェリークは小さくあくびをする。
「眠いのか……?」
「ん……。お腹いっぱいで、お日様は気持ち良いし……」
「ま、そうだな」
暖かな太陽の日差しに心地よい風。見どの芝生は柔らかくて。眠りを誘われない方が嘘に なる。
「昼寝もいいか」
そう言うと、アリオスはアンジェリークの柔らかな腿に頭を乗せる。
「あ、アリオス……!」
突然のことにパニックに陥るアンジェリーク。アリオスの方は悪戯っぽい瞳でアンジェ
リークを見つめている。
「何だよ。眠いんだろ? 昼寝につきあってやるんじゃねぇか」
「で、でも、この格好〜」
どう見ても膝枕をさせられている。誰も見ていないとは言え、恥ずかしさが先に立つ。
「私の態勢がしんどいじゃない……」
「細かいことは気にすんな……」
そう言うと、アリオスは勝手に瞳を閉じてしまう。しばらくすると、寝息まで聞こえて
きてしまう。
「アリオスのバカ……」
真赤な顔で俯いてしまうアンジェリークであるが、その銀色の髪を優しく撫でてやる。
(でも…こんなふうに寝ていられるってことは、私は安心できる場所なのかなぁ……)
そう思うと、少しだけ自分が誇らしくなる。いつも自分を映す金と緑の瞳が閉じた寝顔は格好いいと言うより綺麗
だとか、そんなことを考えながら、いつしかアンジェリークもまど
ろみに誘われていった。
空気が冷たい…そんな感覚にアンジェリークの意識はおぼろげに浮上してゆく。だが、次の瞬間には息苦しさが
襲ってくる。
「んぅ……」
パチリと目を開けると、唇が塞がれている。塞いでいるのは彼女の愛する青年の唇。アンジェリークは慌てて、
離れようとするが、いつのまにか背中に手を回され、身動きも できなくて。結局、されるがままになってしまう。
「もう……」
少しばかり不機嫌な顔のアンジェリークにアリオスの方はしれっとしたものである。
「御姫様に目覚めのキスを送っただけだろうが」
「だから〜」
どんなことを言ってもかなわないのだとは思う。彼の方がいつも一枚上手なのだ。
「それより、もう夕方だぜ。随分、眠っちまったからな」
「本当だ……」
沈みゆく夕方は鮮やかに空を染めてゆく。
「帰らなきゃ…ね……」
少しばかり寂しそうにするアンジェリークの頭を優しく撫でてやる。
「バカ、また来ればいいだろう」
「それは…そうだけど……」
チラリ…とアリオスを見上げる。
「次は三人で来たいな……」
「補佐官殿も入れてか……。賑やかにはなるがな……」
「そうじゃないの」
「?」
何が言いたいのか…という目でアンジェリークを見つめるアリオス。
「レイチェルも入れたら…四人になるわ」
「おい、それって……」
その言葉の真意に気づくアリオス。だが、アンジェリークはすました顔のまま。
「こら、ちゃんと言えって」
背後から抱きしめて、囁かれる声。アンジェリークはアリオスの手を自分の腹部に当て させる。
「新しい家族も一緒にね……」
そう言うと、クスリとアンジェリークは笑う。
「ったく…わかってたら、連れ出したりはしなかったのにな……」
妊娠初期は大事にしなければならない。わかっていれば、膝枕などさせなかった。
「だから、言わなかったの」
「じゃあ、罰を受けてもらうか」
「え……」
ひょいと抱き上げられる。
「ちょ、恥ずかしいわ!」
「大事な身体を大事にしてやってんだ。文句言うな」
「もう……!」
そう言いながら、互いにクスリと笑いあう。
「また、来ようね」
「そうだな」
クスクス笑いあいながら、口付けを交わす。幸せな空気に包まれながら、二人丘を降りてゆく。次に訪れる時を心待ちに
しながら……。
アリオス限定キリ番2828番(ニヤニヤ)をとられたnao様からのリクエストです。ピクニックにいく幸せな二人(膝枕あり)というもの
ですが、うまく答えられたか不安です。あうあう。すみません、こんなので…。
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