始まりは熊の縫いぐるみからだった。
「♪」
 赤ん坊サイズの小さな手がちまちまとリボンを引いたり、緩めたり。
「そ、そう、その感じで……」
 真剣なまなざしで、自分の手首にリボンを結ぼうとする小さな天使を励ましたり、その様子を見守るルノー。
「♪」
「じ、上手だね〜」
 ようやく結び終えた達成感に小さな天使は満足そうに笑う。ルノーもにっこりと笑う。笑ってないのは傍で見ている大人たちである。
「すっかり上手になったよなぁ……」
 レヴィアスに毎日リボンを結んでもらううちに、小さな天使も結んでみたくなったらしい。それから、縫いぐるみ相手に練習を始め、今に至る。
「縫いぐるみからルノーってことは、そのうち、レヴィアス様にだよなぁ……」
「だろうなぁ……」
 小さな天使を溺愛している彼らの主は天使が何をしても喜ぶ。リボンをつけられても、そのままでいるだろう。考えるだけで怖い。
「ねえ……」
「何だよ、ショナ……」
「いらないネクタイとかない?」
「ネクタイ?!」
 ショナの言葉に顔を見合わせると、ショナは小さな天使に視線を向けた。
「リボンを結ぶより、ネクタイの結び方覚えさせた方がいいんじゃない?」
「あ……」
 建設的なその意見に大人たちはポンと手を打つ。
「あ、うん。待ってろ」
 すぐさま用意されたネクタイを手にすると、ショナは小さな天使にそれを手渡す。
「?」
「リボンもいいけど、朝、お仕事行く時にレヴィアスに結んであげたら、喜ぶと思うよ……」
「♪」
 ショナの言葉に小さな天使は嬉しそうに頷く。
 それから、小さな天使がネクタイを手に奮戦する姿は生暖かい目で大人たちは見守っていた。


「♪」
「上手だな、アンジェリーク……」
 しばらくして小さな天使に毎朝ネクタイを結んでもらい、すっかりご満悦な様子のレヴィアスの姿。
「情けない……」
 その光景を見て、キーファーは嘆きの溜め息をつく。
「レヴィアス様がリボンまみれになるよりはましだろう……」
 そうフォローを入れてみるカインであったが、その表情には苦難が浮かんでいる。どちらの気持ちが分かる分、誰も何もいう気にはなれなかった。

リボンを結ばれるよりはましなんでしょうけどねw


‖<Angel Days>‖