ぱたぱた…ぱた……。梅雨時独特の蒸し暑さに天使の羽ばたきもどこかにぶる。屋敷の中は快適な湿度と温度に保たれているとはいえ、微妙に違いは分かるらしい。
「……」
 つまらなさそうにアンジェリークはは窓の外を見つめる。昨日も一昨日も、ずっと雨。外に出してもらえなくてつまらない。レヴィアスがいる時はアンジェリークを離したがらないし、ルノーが遊んでくれたり、絵本を読んでくれたりするけれど。外に出たいという想いがなくなるはずがない。
「……」
 雨の日は何もないとみんな言うけれど、あんなに暗い空から落ちてくるのが透明な水なんて、アンジェリークにとっては新鮮な驚きだし、しっとりとした雨に濡れた木や花はいつもよりもずっと綺麗なのに。
「ア、アンジェ、梅雨はもうすぐ明けるから、我慢してね……」
「〜」
 ルノーの言葉にアンジェリークはつまらなさそうにうつむいてしまう。
「羽が濡れたら、飛べなくなるよ…水鳥とはちがうみたいだし……」
 ショナの言葉にアンジェリークはシュンと顔を曇らせて。アンジェリークの翼は大切な移動手段だ。飛べなくなったら、レヴィアスの所まで飛んでいけなくなってしまう。
「つ、梅雨が終ったら、夏だからね……。そしたら、たくさん遊べるよ。レ、レヴィアス様も夏休みをとってくれるから……」
 だから、我慢してねとルノーはいう。レヴィアスにたくさん遊んでもらえるのは嬉しい。でも、梅雨が明けるのがいつなのかはわからない。毎日毎日雨ばかり。このままやまないのではないか…とアンジェリークは不安になる。
「非科学的だけど、てるてる坊主でも作る?」
「?」
「これを飾ると、雨がやむんだって」
 そう言うと、ショナは手早くてるてる坊主を作り、アンジェリークに見せてやる。
「♪」
 こくこくと頷いて、アンジェリークはショナの服の裾を掴んで、作り方を請う。そうして、三人でのてるてる坊主の作成が始まった。


「……で、結果がこれですか?」
 レヴィアスが帰宅したら、屋敷の至るところにてるてる坊主がかざってあることに、カインは頭痛を感じた。
「おお、懐かしいなぁ!」
「本当だ。俺も作ったなぁ」
 子供時代を思い出したのか、ゲルハルトやウォルターはまんざらでもないようだ。ある意味、一番無難な反応だ。
「個性が出てるな」
「さすが私のルノーです。丁寧に作ってますね」
 品評会に走るのも、ある意味正しいのかも知れない。つくづく常識人であろうとする自分自身にむなしさを感じるカインである。
「雨が降っては退屈か……」
 てるてる坊主の数だけ小さな天使の願いがこめられている。天気予報では週末まで雨。レヴィアスにもこればかりはどうしようもない。
「カイン」
「何でしょうか、レヴィアス様」
 条件反射に受け答えしてしまう天晴れなほどの自分に悲しさを感じる。どうせ、言うのは天使がらみのこと。
「我の分とアンジェリークのレインコートと長靴を用意しておけ」
「わかりました……」
 結局はこうなる。
「アンジェリーク。カインが用意をしたら、外に出してやろう」
「♪」
 更にプレッシャーも加えられて。愛らしい天使の期待の眼差しにカインは泣きたい気分になった。



カイン、可哀想……。


‖<Angel Days>‖