| 狐色に焼けたホットケーキ。色とりどりのゼリー。季節のデザートをふんだんに使用したタルト、ふんわりとしたシュークリーム、新鮮なミルクで作った冷たいアイスクリームなどなど……。それは小さな天使が大好きでたまらないものばかり。だが、テーブル一杯に並べられたそれを見ても、小さな天使は悲しそうに首を振るだけ。 「アンジェリーク…大好きなものばかりだろう? 食べてもいいのだぞ」 そう言って、レヴィアスが促してみても、アンジェリークは悲しそうな顔。大好きでたまらない甘いお菓子達。食べたいけれど、食べたくはない。小さな天使の心には大きく突き刺さった刺のダメージが未だに抜けていないのだ。 「ジョヴァンニとはまだ連絡がつかないのか?」 「向こうのトラブルが原因で飛び回ってますよ。あれで、仕事は優秀ですから」 ことの原因であるジョヴァンニは長期の海外出張で帰ってこない。まぁ、それを見越してのタチの悪い冗談だったのだろうが。残された他の部下にとっては、タチの悪い爆弾を残されたようなものである。 ジョヴァンニの『太るかも』発言は小さな天使にはかなりのダメージだったらしく、ほとんど食事を口にしなくなったのだ。あれほど、幸せそうにお菓子を食べていたのに、今では悲しそうな顔しかしない。 「なぁ、嬢ちゃん。子供は多少コロコロしてた方が可愛いってもんだぜ?」 「……」 と、ゲルハルトが言ってみたときには大きな目に涙を一杯ためてしまった。コロコロという単語に過敏に反応したらしい。 「レヴィアス様はちゃんとアンジェリークのことが好きだってば。鍛えてるから、多少重くても、大丈夫だし、飛べなくなったら、レヴィアス様がずっとだっこしてくれるって!」 これも小さな天使の心にとどめを差してしまって。言ったウォルターに悪気がないのは分かってはいるが、小さな天使が悲しめば、天使を溺愛しすぎている彼等の主の機嫌は悪化するばかりだ。側近の部下であるカインの胃薬の量は日々増加しているし、屋敷の雰囲気も居心地が悪くなっている。 「まったく、あんな小さな子供一人に……」 苦々しく舌打ちをするキーファーを誰も責められはしない。責めるべき相手はジョヴァンニ一人である。 「ジョヴァンニに変わってこいって、レヴィアス様、言ってくれないかな……」 誰ともとなく、みんな同じことを思ったことは言うまでもない。 その頃、子供たちは何をしていたのかというと……。 「ショ、ショナ? な、何をやってるの?」 「計算。君も手伝って」 「け、計算?」 「アンジェリークの翼でその身体を飛ばせるのに、どれだけのエネルギーがいるか……。君も手伝って」 「あ……。そうか」 小さな翼で小さな天使が飛び回るのはエネルギーが要るはずだ。それに見合うエネルギー分であれば、アンジェリークの食べる量を自然と出すことが出来る。 「でも、本人が気にするほどじゃないと思うよ。あの翼で飛び回ること自体が、かなりのエネルギーを消耗するしね」 「う、うん」 多分、結果はアンジェリークにとってはいいことになるだろう。ルノーは嬉しそうに頷く。アンジェリークが元気になるのは嬉しいけれど、ショナもまたアンジェリークを気遣ってくれたことが嬉しかったのだ。 数時間後、機嫌を直して、美味しそうにお菓子を食べる小さな天使を抱きかかえて満足げに笑うレヴィアスの姿に、部下たちはルノーとショナに感謝の意を示した。 |
子供のほうがしっかりしてる……。
‖<Angel Days>‖