| ぱたぱた…ぱた。少しよたつきながら、小さな天使はむずがる。 「ほらほら。おとなしくする!」 「レヴィアス様のためですよ」 ジョヴァンニとユージィンの二人がかりに押さえつけられて、小さな天使は着付けを施されてゆく。赤ん坊 サイズの特注の振袖(ちゃんと、背中の羽の部分は開けられているところも特注である)は小さな天使には 荷が重いようだ。 肌襦袢、長襦袢やら、お腰やらと普段は身に着けることのないものばかり。しかも、身につけるものが多い ほど、身体が重くなる。天使がむずがるのも無理はない。 「髪、どうする?」 「この長さじゃ、結うのもぎりぎりですから。花を飾って、まとめましょう」 「OK〜」 いやいやとむずがられても、大人の男二人がかりに逆らえるはずもない。 「〜!!」 助けてと声にならない声を上げる天使をルノーははらはらと見ている。 「あ、アンジェ、嫌がってない?」 「…まぁ、それも試練だろうし」 何とかしてやれないだろうかと周囲に救いを求めてやろうとするルノーに対して、周囲は冷ややかな態度で ある。 「せめて俺たちにできるのは、レヴィアス様にばれないようにするくらいだからな」 小さな天使の可愛い姿を見せることが今回の目的である。嫌がる工程を見せようものなら、どんなことになる か。想像に難くない。 「だ、大丈夫かなぁ……」 結局、るのーにも何をしてやることはできず。レヴィアスの部下たちは天使の恨みがましい声にならない悲鳴を 享受するしかなかった。 そして、数時間後……。 「アンジェリーク、新年おめでとう」 「♪」 レヴィアスの腕の中で機嫌をよくするアンジェリーク。もちろん、レヴィアスの機嫌もいい。 「よく似合っているな、その姿も」 「♪」 ほめてもらえたのが嬉しいのか、羽をパタパタさせる。赤と金を基調とした振袖は小さな天使によく似合って いた。髪は生花を飾って可愛らしくまとめている。和服姿も十分に愛らしいとレヴィアスはご機嫌である。 しばらくはレヴィアスの膝の上でくつろいでいた小さな天使であったが、しばらくすると、何かを思い出したかの ような表情になって、レヴィアスを見上げてきた。 「どうした?」 「……」 天使はレヴィアスの手を取って、自分が着ている着物の帯のすそを握らせる。 「どうした?」 「……」 身振りでレヴィアスに帯を引っ張れといいたいらしい天使。 「……それは」 ふと、思い当たることに気づき、レヴィアスはアンジェリークを腕に抱いたまま、部下たちがくつろいでいる 部屋に向かった。 パタン! いきなり、ドアが開いて、主が怒ったような顔で入ってくるのを誰もが怪訝に思う。 「れ、レヴィアス様?」 戸惑う隙もなく、レヴィアスの怒声が響き渡る。 「誰だ、アンジェリークに時代劇を見せた者は!」 「時代劇〜?」 この部屋でくつろいでいるゲルハルト、ウォルター、ルノー、ショナ、カーフェイといった面々は何のことやらと 首を傾げる。その間にも、アンジェリークは帯を引っ張ってとレヴィアスにおねだりしている。 「時代劇って、あれか?」 「あれだよな……」 「あれしかあるまい」 大人三人は妙に納得しているのをルノーは不思議そうに見上げる。 「あ、あれ、って、なんだろう?」 「悪代官が着物をまわすあれだよ」 「あれをレヴィアス様がやるの?!」 「やらないから、怒ってるんだろうね」 ルノーの疑問を逐一丁寧に答えてやるショナ。そして、その犯人を思い描いても見る。 (ジョヴァンニあたりかなぁ……。面白がってやりそう) 何も知らない小さな天使に時代劇のビデオを見せたのだろう。意味がわからなければ、遊んでいるようにしか 見えないのだから。 「来年もにぎやかだろうね……」 「で、でも。楽しいからいいと思うよ?」 「まぁ、そうかな……」 にぎやかな光景は悪くはないと思うのはきっとこの天使がもたらせた変化なのだろう。なんだかんだと結束は 強くなったような気がする。 小さな天使と迎える新しい年はきっと去年よりもずっとよくなると誰ともいわずにそう思った。 |
冬コミでお会いした皆様に捧げます。手の怪我の心配、ありがとうございました。何とか、頑張ってますw
‖<Angel Days>‖