どこまでも果てしなく広がる青い空。寄せては繰り返す波の音。それを形づくる海もまた青い。
 青と青。
 けれど、けっして同じ青ではない。違う二色の青がはるか先の水平線で繋がっている。
 強く照らしつけてくる太陽はそんな空と海とによく映えていて。夏、まっさかりの光景である。
「?」
 アンジェリークはは寄せては返す波を不思議そうに見つめる。お水のある場所はお風呂と池しか
知らない小さな天使は月と地球の力で起きる現象を不思議なものとして受け止めているらしい。
「おどろいたか? これが海だ」
 まっかなワンピースの水着を着せられたアンジェリークは定位置とも言えるレヴィアスの腕の中。
レヴィアスも普段のスーツ姿ではなくインディごブルーのシャツに麻のパンツといったいでたち。
 ここはレヴィアスのブライベートビーチであり、近くにはアルヴィース財閥のリゾートホテルが
ある。アンジェリークのためにレヴィアスが無理矢理に時間を作り、部下たちの数人を連れて、
遊びにきていた。(スケジュールを調整するために、キーファーやカインがかなり心労を被った
ことは言うまでもない)
 レヴィアスは海を嫌いではない。むしろ、好きな部類に入る。だからこそ、アンジェリークをここに
連れてきたかったのだ。
「波打ち際まで行ってみるか?」
「♪」
 最初は初めて見る海に戸惑っていたようだが、慣れてきたのだろう。好奇心が一杯と言う顔をして、
頷いて見せた。
「…」
 レヴィアスの腕から降りて、ぱたぱたと天使は波打ち際に近付いて。波が寄せると後退り、波が
引くと追い掛ける。それを幾度か繰り返すと、急に強くなった波がアンジェリークに襲いかかった。
「〜」
 波の洗礼を受けて、アンジェリークは抗議の視線をレヴィアスに向けるが、こればかりは仕方ない。
ぐすんとすねた顔でぺろりと波の名残を舐めたアンジェリークはますます不快そうな顔になった。
しょっぱいのが嫌だったらしい。
「仕方がない……」
 可愛らしいことは可愛らしい仕草だが、アンジェリークの期限を損ねるのはレヴィアスの本意では
ない。おやつに持ってきたイチゴのまるごとシャーベットを一つ取り出して、天使の口に放りこんだ。
「♪」
「口直しだ」
 途端に天使の機嫌が回復する。
「おまえ一人の手にはまだ手に余るようだな。我も一緒に遊ぶことにしよう。それなら、大丈夫か?」
 レヴィアスの言葉に小さな天使は一瞬だけきょとんとしたが、すぐに嬉しそうに頷いた。
「ならば、これをやろう」
 そう言って、レヴィアスが取り出したのはひまわり模様の浮き輪だった。いつも、お風呂で使うもの
よりもずっと綺麗な柄にアンジェリークの顔が輝く。海に行くと決めたときに特注で作らせたものだ。
波に流されたときのためのロープがついている。
「♪」
 楽しそうに、ぷかぷかと浮き輪を使って波を漂う小さな天使をレヴィアスは満足そうに見つめる。こうして、
二人の夏のバカンスは始まった。



 ちなみに浮き輪のロープをしっかり持って、天使の姿を見つめているレヴィアスの姿を見た部下が
まるで鵜飼のようだと思ったのは内緒話のである。

鵜飼レヴィアス……。銀河の中で書きました。ええ、消灯時間前に。(良い子はまねをしないでね)ワンピースになったのは
ある方のご意見です。


‖<Angel Days>‖