帰り道を歩いていたアリオスは甘い香りにふと足を止めた。香りの正体は屋台で売っているベビーカステラであった。
「アンジェに買っていってやるか……」
 アリオスの帰りを待っているであろう小さな天使のことを考えてると、自然に頬が緩む。当然のようにアリオスの足は屋台へと向かった。
「いらっしゃい! どれにします?」
 屋台には見本用にか、アニメやキャラクターもの絵が描かれている小さい袋、大きな袋、その中間の袋が並んでいて、アリオスは迷うことなく即答した。
「そうだな、一番大きなのを」
「はいよ!」
 屋台のお兄ちゃんは威勢よく応えると、焼きたてと思しきベビーカステラを一番大きな袋に入れてゆく。それを見て、アリオスはあることに気付いた。
「キャラクターものなんだな……」
「ええ。可愛いでしょ」
 某猫型ロボットだの、某リボンがチャームポイントの子猫の姿をしたベビーカステラをみて、アリオスはふと考えた。
(あいつは頭から食うんだろうか、体からか……)
 ひよこ饅頭でよく論議されることを思いだし、小さな天使はどのような選択をするのか、かなりの興味を覚えたアリオスであった。


「アンジェ、ほら、土産」
「♪」
 アリオスが差し出した袋からは甘い香り。受け取ると、小さな天使にはずっしりと重くて、思わずよたよたとよろめいてしまうが、頑張ってリビングまで運んでゆく。その幸せそうな後ろ姿にアリオスの悪戯心がさらに騒ぐ。
(泣かなきゃいいがな……)
 頭と身体をどちらから食べる以前に、キャラクターもののベビーカステラをみて、食べるのが可哀相だとばかりに、思案したりするのではないかとか、思うところは色々ある。
「〜♪」
 嬉しそうに袋を開けてガサガサと中のベビーカステラを探す小さな天使。
「……」
 一つ、手に取ったのは某猫型ロボットの形をしたベビーカステラ。小さな天使はじっとそれを見つめて何か考え込むような顔をする。
(やっぱり、食えねえか……?)
 思案する様子を見てアリオスは反応を伺う。だが、小さな天使の取った行動はアリオスの想像の斜め上を飛んでいた。
「〜♪」
「……」
 おもむろに首の部分からベビーカステラを千切ると、そのまま口の中に首の部分を放りこんだ。次に身体の部分を口にする。どうやら、思案していたのは、一口では口に入らないから、どうやって食べるかと考えてのことだったようだ。
(子供は残酷だって言うがな……)
 苦笑するアリオスを気にすることなく、小さな天使はベビーカステラをおなかいっぱいになるまで満喫したのであった。

アリオスは天使に何を期待してたんだろう……。あ、キャラクターものって、どこから食べるか悩みません? 私だけ?


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