リビングにはチョコレートがあった。テレビで手作りチョコレートの特集をしていたのをアリオスとみた。(たまたまアリオスが見ていたニュースで特集をしていただけで、手作りチョコにアリオスが興味を持っているわけではない)よくわからないけれど、チョコレートを大好きな人にあげなければならないらしい。ならば、頑張ってみようと小さな天使は思った。だが、思うだけでよかったのだ……。


「〜」
 冷蔵庫から生クリームを取りだそうとして、頑張って冷蔵庫の扉を開けようとした。だが、冷蔵庫は小さな天使の力ではなかなか開きにくい。一生懸命力を込めて、頑張って開いた。
「……」
 だが、冷蔵庫の中は空っぽだった。…というか、酒以外は何もない。冷蔵庫の棚は取り払われ、缶ビールが並べられているだけ。
「……」
 冷蔵庫の中に入り込んで、一生懸命探しても、何もない。悲しくて、冷蔵庫を出ようとしたが、パタンと冷蔵庫の扉が閉まってしまった。
「〜?」
 ドンドンと扉を開けようと叩いてみるけれど、それはかなわない。冷蔵庫の中は冷たい。開ける時は必死に開けたから、簡単に開かない。
「〜」
 悲しくて、悲しくて、小さな天使はぽろぽろと涙を零した。


 帰宅すると、いつもは腕の中に飛び込んでくるはずの小さな天使がいないことにアリオスは愕然としていた。
「いない……?」
 昼寝でもしているのだろうかと思い、寝室を覗いてみても、いない。
「おい……?」
 何かあったのだろうか、家中を探し回るが、姿はない。
「嘘だろ……」
 焦燥感に駆られたアリオスの耳に小さく何かを叩く音が聞こえて来た。
(……何だ)
 心を落ち着けて、耳を澄ませてみる。それはキッチンから聞こえて来た。
(ここか……?)
 冷蔵庫を見てみたが、思ってもいない場所だ。こんなところに入り込むなんて誰が考えるだろう。
「アンジェ……?」
 恐る恐る冷蔵庫の扉を開けると……。
「〜!!」
「うわっ!!」
 冷蔵庫の扉が開いた途端、勢いよく飛び出してきた小さな天使をアリオスは慌てて受け止めた。
「どうした? 隠れんぼか?」
「〜!!」
 アリオスの言葉に小さな天使はふるふると首を振るだけ。アリオスに必死にしがみついている。
「こんなに冷えちまって……」
 慌てて、風呂に連れて行ってお湯を張る。風呂嫌いの小さな天使ではあるが、冷えた体を暖めなければならない。タオルに包んでさわさわとさすってやって、暖を戻してやる。
「何で冷蔵庫にいた?」
 様子から察するに不本意で閉じ込められたのだろう。じゃあ、どうして、こんなことになったのか……。
「……」
 小さな天使はテーブルの上のチョコレートを指差す。
「チョコレートって……。あぁ、そうか……」
 もうすぐバレンタインである。小さな天使は自分にチョコレートを作りたいと思ったのだろう。
「馬鹿だな……」
 抱き締める腕に力を込める。けれど、愛しさの方が込み上げる。
「一緒に作るか?」
 アリオスの言葉に小さな天使はコクリと頷いた。


 その後、二度とこのようなことがないように、冷蔵庫に鍵をかけられたのは言うまでもない。

これはある人との会話から生まれた話。努力はしたんだよ、天使は……


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