仕事帰り。たまたま夕方近い時間だったので、酒のあて兼夕食のおかずを買いにアリオスはデパートの地価の食品売り場に行った。彼の帰りを待つ小さな天使にケーキのひとつも買ってやろうと思ったこともある。いつも、コンビニのアイスだけではかわいそうだ。デパートの食品売り場にはいろいろなケーキの店があると、勤務先の病院の看護婦が話していたので、小さな天使の喜ぶ顔がみたいと思ったのも事実である。
 チーズの盛り合わせをいくつかと、生ハムのサラダを自分用に買った後にケーキを見に行ったアリオスは、店の多さに一瞬、あっけに取られた。大きいデパートなので、売り場も広い。そういうわけで、いろいろなケーキの店が並んでいるが、普段ケーキ類を口にしないアリオスから見れば、まさしく『あなたの知らない世界』状態で。正直、困惑してしまっていた。
(どれがいいだろうか……)
 できたら、小さくて天使が食べやすいものがいい。ミルフィーユなどは、天使が食べるのに困ってしまうから、絶対却下だ。あれはアリオスから見たら、謎のケーキでしかない。
 とりあえず、いろいろ見ていたら、不意に目のとまったケーキがあった。
「アンジェリーク?」
 アンジェリークと値札を前におかれた、小さな丸いケーキ。小さな天使にはちょうどいいサイズ。だが、値札を見た時点で、アリオスの心はすでに決まっていた。
「……これを欲しいんだが」
 アリオスの心はすでに家で待っている小さな天使の元に飛んでいた。


「ほら、アンジェ。土産だ」
「♪」
 帰宅したアリオスに出されたケーキを小さな天使は無邪気に喜ぶ様子を見せる。その様子がまた可愛くてたまらない。
「お前と同じ名前のケーキだ、アンジェ。お前みたいで可愛いだろ?」
「……」
 どこか複雑そうな顔をする小さな天使。
「嫌か? ケーキは嫌いか?」
「……」
 フルフルと小さな天使は首を振る。ケーキは嬉しいけれど、自分はこんなケーキみたいだろうかと思ったのだ。けれど、アリオスが心配そうに見つめている。自分のために買ってきてくれたケーキだ。それだけで、とても嬉しい。
「♪」
 ぎゅっとアリオスに抱きついて、嬉しさを伝えると、アリオスは嬉しそうに笑った。

ガトーアンジェリークという名のケーキを見て。アリオスなら、絶対に買うだろう……。


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