街の景色ははどこを取っても、ハロウィンで埋め尽されている。カボチャだらけと言っても、過言ではなく。だから、つい、カボチャのプリンをアリオスが買ってしまったのは仕方ないことなのかもしれない。もちろん、そのおまけには、ジャック・オ・ランタンの小さなフィギュアがおまけについていた。
「帰ったぞ、アンジェ」
「♪」
 アリオスが帰宅すると、小さな天使はぱたぱたと、嬉しそうに飛んでくる。
「今日はプリンを買ってきたぞ」
「〜♪」
 プリンもこの小さな天使の大好きなものだ。箱を渡してやると、その重さによたよたとなりながらも、嬉しそうな顔で運んでゆく。アリオスは自分の分の夕食(ちなみに昨日の残りのカレーである。二日目のカレーはやはり美味しい)を暖めてから、リビングに向かう。いい子で待っていた、小さな天使のためにプリンを出してやるが、いつものプリンと色が違うので、きょとんと首を傾げる。
「ああ、今日はハロウィンだからな、カボチャのプリンにしたんだ」
「?」
 更に首を傾げるアンジェリーク。ハロウィンなんて知るはずもないことに思い至り、アリオスは説明することにした。
「ハロウィンってのは、仮装したガキが‘菓子を出さないと、悪戯するぞ’っと、人ん家を脅し回る祭りなんだ」
「……?」
 よく分からないという顔をする小さな天使。アリオス自身が歪んだ知識としてハロウィンを認識しているからだ。
「で、カボチャが出てくるらしいからな。カボチャのプリンと言うわけだ」
 よくはわからないけれど、食べられるものには違いないと判断したのか、アンジェリークはプリンを口にする。
「♪」
 ほこほこしたカボチャの食感が気に入ったのか、ぱくぱくとアンジェリークは食べ続ける。その食べっぷりを見て、ふとアリオスは考えた。
「お前はお菓子か? 悪戯か?」
「?」
「さっきのハロウィンの話だよ」
 その言葉に小さな天使は少しだけ考える仕草をする。お菓子の買い置きはあるし、この天使の悪戯などたかが知れている。だが、それはアリオスの思い込みに過ぎなくて。アンジェリークはギュッとアリオスにしがみついてきた。
「アンジェ? 悪戯か?」
 アリオスはお菓子ではないから、小さな天使の悪戯なのか、と考える。だが、天使はふるふると首を振って、アリオスを見上げてきた。欲しいのは、お菓子でもなく、悪戯をしたいわけでもなく、ただ一つであることを小さな体で訴えるために、小さな天使は更にアリオスに抱きついた。

お菓子よりも、アリオスがいいんですよ、この子はw


‖<BACK>‖