| 「アンジェ、大丈夫か?」 「〜」 ぐったりと小さな天使は床に張り付いているのを見て、仕事から帰ってきたアリオスはひどく後悔した。 アリオスの家はマンションの上の方にあるので、窓からアリオスが帰ってくるのが見えるのだ。だから、アンジェリークはアリオスが帰宅してくる時間になると、窓辺に張り付いてアリオスの帰宅を待ちわびるのだ。 だが、これには大きな落とし穴があった。その窓のある部屋にはクーラーを置いていない。そして、今日は帰りにアンジェリークにお土産をかおうと寄り道をして遅くなった。夏の西日が差し込む暑い部屋は小さな天使にはかなりの負担だったようだ。 「ほら、アンジェ、土産」 冷たいアイスクリームのカップを頬に当ててやると、ぼんやりとアンジェリークは顔を上げた。 「……」 いつもなら、ぱたぱたと飛んできて、アリオスを迎えてくれる小さな天使の今の姿にアリオスは寄り道したことをひどく後悔した。 基本的にクーラーは余り好きではないが、一人で留守を守る小さな天使のために一部屋はクーラーをつけっぱなしにしている。その部屋にいれば、こんなことにもならずに済んだのだ。 「アンジェ……」 飛ぶ気力もない小さな天使を抱き上げて、クーラーの効いている部屋へ。汗を拭いてやったり、水を飲ませたりしていると、やがて顔色が戻ってきた。 「大丈夫か?」 「♪」 小さな天使はこくりと頷く。その愛らしさに少しだけ救われた気がした。 「アンジェ、俺を待たなくてもいいんだぞ? こんなふうにまたなったら、困るだろ?」 クーラーのない西日の射す部屋は小さな天使に良い環境であるはずがない。自分のために無理はしてほしくない、それがアリオスの本音だ。だが、アンジェリークは悲ししげな顔で首を振ると、ギュッとアリオスにしがみついた。 「アンジェ……」 「〜」 小さな体一杯で訴えてくる。やめさせないで、と。どうして、逆らえるだろうか。 「じゃあ、今度から電話のベルを三回鳴らす。もうすぐ帰ってくるって合図だ。これがなったら、そこで待ってろ」 「♪」 アリオスの提案に小さな天使は今度は頷いた。 そうして、決まった時間に鳴る電話のベルは天使の笑顔をもたらすことになった。 |
帰るコール…って、もう死語?
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