シュークリーム

 小さな口がカプリ、と自分の顔の半分はあろうかと思えるほどのシュークリームにかぶりつく様は可愛らしいけれど、
どこか心もとない。
「美味しいのか?」
 ジュリアスが問掛けると、小さな天使、アンジェリークは至福の表情で大きく頷く。小さな羽根はパタパタと動いていて、
喜びを表現しているようだ。そ笑顔との様子にジュリアスは少しばかり複雑な表情になる。
「行儀がいいとはいいがたいのだが、な……」
 ただでさえ、赤ん坊サイズの小さな天使には大きすぎるサイズのシュークリームだ。ナイフとフォークでで適度な大きさ
に切って食べさせることも提案したのだが、当のアンジェリークに全身で拒否されてしまった。
 かといって、カスタードクリームがたっぷり詰まった大きめのサイズのシュークリームは小さな天使が支えながら食べる
のには無理がある。
「ディアももう少し考えて作ればいいものを……」
 思わず、ここにはいないシュークリームの制作者に愚痴って見たくなる。
 どうしても外せない用事があるのだ、と小さな天使とシュークリームを持ってきたのは、他ではなくディアであった。何故
自分が、とディアに問う前に置いていかれてしまった。そして、今に至るわけである。
「まったく、人の気も知らぬに……」
 苦笑混じりに呟いたとて、一心不乱に食べている天使に真意が通じるはずもなく。キョトンとジュリアスを見上げてきさえ
する。あどけない天使の様にジュリアスがかなうはずもない。
「ほら、クリームがついているぞ……」
 頬についたクリームを指先で拭いとってやる。すると、アンジェリークはその指をペロリ、と舐めてきた。
「こら、行儀が悪いではないか!」
 叱ってみたところで天使には通じず、もっと、とねだられて。結局折れてしまうのはジュリアスなのだ。
「まったく、そなたは……」
「♪」
 お説教モードに入ろうとしても、無邪気な笑顔を前にすれば、白旗を上げてしまうしかなく。長い時間を掛け、ジュリアスは
アンジェリークにシュークリームを食べさせることになった。
 コンコン。ノックの音にも気にすることなくシュークリームにかぶりつく小さな天使。ジュリアスも仕方ないと思いつつ、
返事を返した。
「入れ」
「失礼します。この間の書類で……」
 書類を片手に入ってきた己の副官である炎の守護聖オスカーは扉を開けるなり、絶句してしまう。
「どうした、オスカー。用件はすぐに言え」
「は、はぁ……」
 当のオスカーは目の前で繰り広げられる光景を幻と信じたいらしい。けれど、幸福そうにシュークリームを食べる小さな
天使とそれをほほえましく見ているジュリアスはやはり幻ではなく。半ば、固まったまま報告を残していった。
「何をやっているのだ、あの者は……?」
「?」
 オスカーの様子がおかしいことに自分たちに要因があることなど気づかないままに二人は首をかしげた。


「俺は何も見なかった……」
 ジュリアスの部屋の前で、そうぶつぶつといっていた炎の守護聖を何人もの目撃者がいたことはまた後日談である。


これは友人たちと話していて、私が書くことになった話。ある意味、煩悩の形ですね(笑)。

|| <Pureness Angel>