お月見
| 今夜は中秋の名月ですから、一緒にお月見をしませんか?との菊から誘われた。もちろん、受けないはずがない。 ススキを飾り、丸い団子が盛られた縁側。見事なくらいに鮮やかな月。 「耀さんやヨンスさんのところも若干やり方は違いますが、こうして月を愛でるんですよ」 「そうなのか。俺たちの方では月は狂気の象徴だからな」 菊の説明にアーサーはそう言って月を見上げる。 「ふふ、ルナティックでしたっけ?」 「ああ。だから、月夜の番には手術をしないと公言する医者もいるらしい」 「こんなに綺麗な月なのに……」 「綺麗だからこそ、かもしれないな……」 太陽の光のように激しくもないけれど、神秘的な輝きを放つ。だからこその畏れがあるのかもしれない。 「おまえのところはこの月を美しいと思っている。だから、俺は月をおまえのところで愛でるんだろう?」 しれっと言うアーサーに菊は頷く。 「月が綺麗ですね、って言葉で愛を表現した作家がいるんですね。きっと、こんな風に綺麗な月で、共にいる人がとても素敵な、そんな月だったのかなぁって思うのですよ」 いつもより饒舌になってしまっていることを菊も自覚はしている。けれど、月がとても綺麗で。たくさん、話をしたくて。 「夏目漱石、だな。俺のために死んでもいいって言われるより、俺はこっちがいいな」 「え……」 意訳はされているが、どちらも日本の文学者が訳した言葉。愛を告げるための、言葉だ。 「何で知ってるんですか……」 「気にするなよ」 真っ赤になる菊をぎゅっと抱きしめる。 「言わずには言られないよな。こんなに綺麗な月があって、愛しい奴がそばにいて」 「月がみてますから、その……」 「いいじゃねえか。月だって見られてばっかじゃ不公平だろう?」 「もう……」 けれども、それ以上は逆らう気になれないのは、恥ずかしいという思いよりもそれに勝る愛しさがあるから。おずおずと背中に腕を回すと、アーサーは極上の笑顔を浮かべて、抱きしめる腕に力を込めた。 |
皆さん、あの夜は雨でしたが、月は綺麗でしたw
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