寒い日に



  秋になると、大堂寺家には大量の栗が送られて来る。親戚の山で取れるもので市場に出せないものを分けてもらっているのだ。
市場に出せないと言っても、実が育ちすぎて、爆ぜてしまった者なので、味は悪くないし、大粒である。
「友達に分けてあげるんなら、取り分けるわよ」
 3人家族に段ボール一杯の栗は荷が重すぎる。ご近所や職場の仲の良い人に分けてやるのだ。
「うーん、そうだな。みんなのところにも配るか」
 みんな、というのは、かつて地球を救った勇者であった仲間達。それぞれの進路についてはいるが、なんやかんやでみんな地元に
いるので、会わない日はない。
「森のところは男ばっかだから、多めに…と」
 などと、袋詰をしていると、ふとあることを思い出す。
「あ、そうだ。お袋、頼みがあるんだけど……」
「小遣いの交渉なら、無駄だわよ」
 ピシッと突っぱねるあたり、伊達に20年以上、炎の母親をしているだけはある。
「そうじゃなくて……」
 炎は事情を話し始める。
「…ならいいけど。あんた、できるの?」
「協力者がいるからな。何とかなるだろ」
「いいけどね。じゃ、はい」
 5人分の袋詰をされた栗を受け取りながら、思いついた計画の良さに心の中で自画自賛する炎であった。

「わぁ、大きな栗!」
 炎におすそ分けをいただいた栗を見て、驚く美奈子。栗はかなりの大粒のもの。浦山で取れる栗の1.5倍はある。
「栗ご飯にして食べるわね」
 皮をむくのは大変だけど…と、悪戯っぽく笑いながら。
「あ、美奈子ちゃん、協力してくれよ」
「協力?」
「こんなに大きな栗があるんだからさ……」
 そっと美奈子を近くにおいてないしょ話。竜は今日もバイトで遅くなる予定。
「あ、それ、いいアイデア!」
「だろ?」
「うん。お兄ちゃんも喜んでくれるわ」
 炎の持ちかけた話を快く受け入れる美奈子。そして、ダイアリーには約束の火に大きくハートマークがつけられた。

 そして、数日後。いつもの通り、夜遅くまでバイトしていた竜は家路を急ぐ。今日は早く帰ってくるように、と美奈子に釘を刺されて
いるのだ。
「今日は冷えるな……」
 吹き付ける風も冷たく、鍛えている身体にもきつい。美奈子が風邪をひかないか心配だ。
「ただいま、美奈子」
「お帰りなさい、お兄ちゃん!」
 美奈子が出迎えてくる。だが、今日はそれだけではなかった。
「お帰り、竜!」
「炎……」
 竜の家が今のアパートになってから、よく来るようにはなっていたが。
「寒かったでしょ? ちょっと待っててね」
「あったかいもんだすからな」
 などと、二人仲良く台所に行くのが非常に気になる。炎曰く『竜の妹だし』、美奈子曰く『お兄ちゃんのお友達だし』で、仲がいいらしい。
少し、複雑な気もするのだが。
「はい、お待たせ!」
 その言葉とともに出されるのは……。
「栗ぜんざいか」
 竜の大好物である。
「俺と美奈子ちゃんとで作ったんだぜ。ありがたく食えよ」
「…何をたくらんでいる」
 美奈子1人なら、ともかくとして。炎が絡んでいると何か、ありそうな気がしてならない。
「やだ、だって、今日はおにいちゃんのお誕生日でしょう?」
 当然のようにこたえる美奈子は炎と一緒に笑っている。
「誕生日は好きなもんだよな!」
「……」
 竜は何も言わず、栗ぜんざいを一口すする。程よい甘さのそれは、店で食べるものよりもずっと美味しい。
「美味いな……」
 素直な賞賛を耳にして、炎と美奈子は満足そうに笑う。大好きな人が生まれた日から。その人に喜ぶか拝みたい。ただ、それだけの
こと。自分自身も嬉しくなる。
 木枯らし吹く寒い夜。だが、心も身体も暖かな誕生日は過ぎていった。

 久々の創作ですね。ごめんなさい……。最近、「遥か〜」の頼久と天真を書く時に竜・炎をベースにしている事もあり、久々って気が
しないんですが。ごめんよ、二人とも……。んで、HAPPY BIRTHDAY,RYU!