お父さん

「あのね、おにいちゃん。この間、お父さんに遊園地に連れて行ってもらったんだ〜」
 写真を見せながら、楽しそうに説明する一也に壱哉もそうか…と写真を見る。友達やその家族とも一緒なのだろう。
「ものすごく楽しかったんだ〜」
「そうみたいだな」
 どの写真の中の一也も楽しそうな顔。一年前には入退院を繰り返していたようには見えない。
「お兄ちゃんも今度行こうね。あのね、吉岡くんとお父さんにお弁当作ってもらって」
 子供ながらに壱哉にお弁当を作らせるのは危険だと判断しているらしい。その会話を山口と料理の支度をしながら聞いていた吉岡は複雑な心境に手が止まりそうになる。
「あの、すみません……。一也が……」
「いえ……。壱哉さまはそれ以外には優秀な方で……」
「うん、わかってる」
 経営者としての彼の手腕を間近で見るようになり、その才能には舌を巻くが、人間臭いめんをそういう面で感じ取れることは好ましいことでもあると思う。
「でね、お父さん、すごいんだ〜。帰りの電車でつり革持ったまま寝てたんだよ〜」
「……つり革を持って電車でか? それはすごいな」
「うん。電車が揺れてるのにあわせて身体もね、揺れたんだ〜。でも、ぐっすり寝てたんだ」
「山口さんは器用だな……」
 きらきらした瞳で父がすごいのだと語る一也とそれに感心する壱哉。今度は山口がいたたまれない気分になる。
「日本のサラリーマンなら、結構できると思うんですが……」
 電車にゆられるサラリーマンが少しでも睡眠をとろうと、つり革に捕まって眠る光景は別にすごくもないと思うが、子供には荘思えるのだろう。それに感心している壱哉はともかくとして。
「すみません、壱哉様は車での移動がほとんどで……」
「ええ、わかってますが……」
 申し訳なさそうな顔をする吉岡に山口はそういうしかなかった。

すみません、山口さんを書こうとすると、もれなく吉岡さんと一也君がついてくるのはデフォルトです。
ちなみに電車でつり革持って寝るの寝るの得意ですw