最強のライバル
| 夕食後、仕事をしていた一哉はコーヒーが飲みたくなり、携帯に手を伸ばしたが、その手を止める。 「この時間なら、キッチンだな……」 すっかり、むぎの家政婦の行動パターンも理解した一哉は気分転換もかねて、キッチンに向かった。 「おい、鈴原、コーヒーを頼む」 「……いいけど。何で、携帯にかけないの?」 「気分だ」 「何、それ」 そう言いながらも、むぎはてきぱきとコーヒーの準備に掛かる。その後姿を見て、一哉は頬を少しばかり緩ませる。携帯で頼めば、むぎはすぐにしてくれるだろうけれど、自分のために動いてくれる彼女を見たかったのも事実だ。彼がこの家のために雇った家政婦は皆のために働いている。ほんの少し、独占欲が現れてきている。 「そう言えば、何してるんだ?」 夕食後だというのに、むぎは何かの下ごしらえをしているようだった。 「夏実があたしとお弁当食べたいって言うから、作っていたの」 「丘崎さんが」 むぎの口から出た彼女の親友の名前に一哉は怪訝そうな顔をする。 「前はうちに来て、あたしが作ったご飯とか食べてたんだよ。で、久々にあたしのご飯食べたいって行ってくれたんで〜。明日一緒にお弁当にしようって話になったの。あ、材料費は自分で出してるから!」 「いや、それくらいは構わないが……」 朝はバタバタしているから、今のうちに下ごしらえというのもわかる。親友に作ると聞いて本の少し安心したことは間違っても口には出せない。この家の同居人全員が彼女を心憎く思っているのだから。 「はい、コーヒーお待たせ」 「ああ」 コーヒーのいい香りが鼻腔をくすぐる。時々はこうして、自分で直接頼むのもいいかと一哉は思った。 そして、翌日のカフェテリア。朝食をとるために赴くと、むぎと夏実の姿を一哉は見かけた。 「美味しい〜。やっぱ、あんたの作るご飯は最高だよねぇ〜」 「ふふ、夏実にそう言ってもらえると、嬉しいな〜」 ドリンクとスープはカフェテリアで購入したのだろう。席だけはここでということらしい。楽しそうに食事をしている。 「あ、こんにちは。御堂さん」 「あ、ああ」 にっこりと一哉に挨拶する夏実にただならぬものを感じて、一哉は怪訝そうな顔をする。 「御堂さんもお昼ですか?」 「ああ、そうだが」 「あたしたち、すずが作ったお弁当なんです。すずが『あたしのため』に作ってくれたお弁当なんですよ〜。あたしの好きなもの、いっぱい入れてくれて♪」 『あたしのために』という部分が、強調されたのはきっと気のせいではないと一哉は気づく。 「ああ、そうだな。毎日食べてる俺が保障するぜ」 とりあえず、周囲に聞こえない程度の声ではあるけれど、釘は刺しておく。鉄は熱いうちに打つのに限る。 「そうですか〜。よく、パジャマパーティやって、一晩中恋バナとか色々してたんですよ〜。そのときに作ってくれるむぎの夜食も美味しかったですよ〜。あの時はおそろいのパジャマ買ったよね〜」 夏実も負けてはいないらしい。…というか、既にけん制の域を超えている。 「あの、二人とも……」 これはなんの褒め殺し大会なのだろうかと、むぎは困惑するしかない。一哉と夏実の間であがる火花にむぎはただ戸惑うしかなかった。 「……コブラ対マングースってあんな感じ?」 「一宮……」 「ある意味、最強のライバルだね」 その様子を見ていた、他のラ・プリンスがこう会話をしたことは言うまでもない。 |
ラ・プリンスVS夏実ちゃんでしたが、まぁ、これもある意味、そういう対決かと……。ほら、ラ・プリのディアデームですしw
他の三人は対決は避けてといるかと思うので……。