据え膳

 あふ…と大きくカナンはあくびをする。昨日は読んでいた本が面白くて、ついつい遅くまで読みふけってしまったのだ。
 午前中のパルナス教授の講義は何とか乗り越えた。問題は昼食を取り終えた今である。おなかも適当にふくれ、ぽかぽかの陽気で昼寝びより。
(ちょっとだけなら……)
 そんな誘惑にかられるカナンを誰が責められようか。セレストがおやつを持ってくるまでまだ時間はある。カナンは誘惑に耐え切れず、ベッドにふらふらと向かった。
「カナン様……」
 優しい声が降り懸かる。だが、まだ眠くて瞼を開ける気にならない。
「カナン様……」
 再び優しい声。起きたくないと、むずがっていたら、ふわりと暖かな何かがかけられた。少しばかり肌寒かったこともあり、眠りの中にいながらも、カナンはそれにくるまった。
 そして、西日が差し込んできた眩しさに目を開けると、もう夕日が差し込む時間。時計を見ると、5時を少し過ぎている。
「お目覚めになられましたか?」
 優しい声が降りかかる。ベッドサイドのいすに腰掛けるのは従者であるセレスト。
「あれ……。おやつは?」
「……何度も起こそうとしたんですが、起きられなかったので。僭越ながら、毛布をかけさせてもらいました」
「ああ、そうか」
 夢の中で降りかかってきたのはこの従者の声だったらしい。そして、ふわりと暖かな何かをかけられたのは、今時分のみを覆ってる毛布。
「しかし、お前もあれだな」
「は?」
「据え膳くらい、食わぬか。ばか者!」
「あのですね〜」
 いきなりとんでもないことを言い出すカナンに愕然と肩を落とすセレストであった。


いや、何となく思いついた話……。

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