Pain

 

 涙が、こぼれた。
 どうしてこの人はこんなにも優しいんだろう。
 一人の夜はなんだかとても寂しくて、なのにこっそりと家を抜け出した深夜。
 人の気配のない街をぼんやりと歩いていたうさぎを、はるかが見つけてくれた。
「寂しい」って口にはできない声を。それでも受信してきてくれた。
 そして−−暖かな腕で抱きしめてくれる。
 寂しさに心が死んでしまわないように。
「はるかさん、……ありがと」
「ちゃんと言わないと駄目じゃないか、おだんご」
「え?」
「淋しい時は傍にいて−−って、ちゃんとボクに言わなくちゃ……ボクには判らないんだから」
「でも……」
 うさぎの言葉を遮るようにして、はるかは言った。
「迷惑じゃない! おだんごのためになら、ボクはなんでもするよ。君を助けるためなら、地獄に堕ちることも厭わない。
……好きだから」

「来てくれただけで、嬉しいよ?」
 なみだめで、それでもうさぎははるかに笑いかけた。
「あのね、はるかさん。……すごく胸が痛いの。どうしよう?」
「ボクならお団子にそんな無駄な痛み、感じさせないよ。誓って言える」
 死けんんで、強い眼差しにうさぎの心は揺れる。
 心の揺れに流されてしまえれば、いっそ楽になれるだろうか。
 ふとそんなことを考えた自分を、うさぎは軽蔑した。
「だめなんだぁ、あたし」
「おだんご?」
「あのね、あたしひどいの。ずるいの。応えられないの判ってるのに、甘えちゃうんだ……。みんなに。はるかさんに」
「ずるくてもいいんだ。みんな−−お団子のことが大好きで、……許してるんだから」
「うん、しってる。……でもこれ聞いたら、はるかさん、あたしのこと嫌いになるよ。絶対に」
 確信をもって言ったうさぎを、はるかが訝しそうに見つめた。
「まもちゃんがね、いないの。連絡、全然取れなくて…どうしたらいいのか判らなくて――縋っちゃったんだよね、星野に」
「……っ」
 声を無くして、はるかはうさぎを見つめた。
 大事なものを掴みそこねた、そんな顔をするはるかを、うさぎは凝視した。
「はるかさんに甘えてばかりで、ごめんね」
 うっとりと囁いて愛しいプリンセスを、はるかは狂おしく抱き締めた。
「それでも! うさぎが望むなら、ボクは一緒に堕ちてあげるよ」
「そんなしかく、もうないよ。あたし、はるかさんを裏切ったんだもん。まもちゃんも裏切ったんだから!」
 だから。
 もう優しくしないでね。
 こんなふうに優しく抱き締めたりしないでね。
 痛む胸が、もっと痛くなって……辛いから。
「あたし、でも、やっぱりはるかさんのこと大好きだから、
来てくれてありがとう−−お休みなさい」
 するりとはるかの腕の中から抜け出して、うさぎは微笑んだ。 寂しい気配をまとった少女は、はるかの目の前で闇に
溶けた。

 ――キングとなる人の手でもなく、ましてはるかの手でもない者の手を取って。

 歯車が、きしんだ音を立てた。


まどかさんのはるか×うさぎパート2。いやぁん、こういうのもいい。そう、星野×うさぎに私もよろめいたもん。
リライトしてて,すごく楽しかった。うん。