小さな大きな願い
ぱくぱくぱく……。最近の小さな王子様、カナンの食欲はかなりのものだ。余りに食べるので、セレストの財布は厳しいけれど、カナンの成長のためなら、仕方ないというより、これも喜びである。 「おいしいですか?」 「うん」 「でも、食べ過ぎは体に毒ですからね」 「うむ、分かってはいるのだが、早く大きくなりたいのだ……」 シュンとうつむくカナン。 「大きく…ですか?」 「うん。セレストくらいに……」 「私くらいに、ですか……」 正直、想像もつかないが、夢を見るのはカナンの自由だ。 「どうしてですか?」 だが、どうして大きくなりたいのかも知りたかった。この10センチサイズの小さな王子様がセレストくらいに成長させるとしたら、色々と育て方を考えてやらなければならない。小さい華南が可愛いことは可愛いが、カナンの願いをかなえてやりたいと思うのも事実で。これを、末期というのだということをセレストは半分自覚している。 「前に公園に連れて行ってくれただろう? 僕を頭に乗せて」 「はい」 「あの時、セレストの背の高さからみた世界はものすごく高かったんだ。僕はこのとおりのサイズだから、見える世界は限られている。セレストくらいに大きくなったら、世界はもっと広がるんだなぁと思ったんだ」 「カナン様……」 何となく、その感覚はセレストにもわかる気がした。小さい頃、父親にしてもらった肩車。高くなった視点から見た光景はとてもすばらしかったように思えた。それと同じ感覚なのだろう。まして、こんなに小さな身体で、好奇心一杯の性格だ。未知の世界に心をはせるのもわかる気がした。 「早く大きくなるように私も協力します。でも、頭の上に載せてあげることはいつでも出来ますし。なるべく時間を作って、華南様とお出かけしますよ」 「本当か?」 パッとカナンの顔が輝く。その表情にセレストは戸惑いを見せた。 「嬉しいぞ! セレストは毎日忙しそうにしてるから、そんなこといえなかったし……」 「それは……」 よく食べるようになったカナンのご飯代を稼ぐためにアルバイトをしているとは口が裂けても言えない。カナンが大きくなりたい原因がそこにあるのなら……。 「ですから、カナン様も無理して大きくなろうとしないでくださいね」 「うむ。わかったぞ」 こんな会話にもささやかな幸せを感じる。今日は晴れの日の日曜日。絶妙のお散歩日和だ。カップケーキとお茶を持って、出かけようとセレストは思った。 |
アンジェで天使コレットばかり書いてたんで、ちっちゃ王子が書きたくなりました。ちっちゃ王子が好き〜vvv
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