White Day


 ここが特別な場所だから。
 いまは特別な立場だから。
 だから通せる我侭。
 でも、ね?
 この我侭はあなたのための我侭なの。
 だから、今日は「特別」。
 大好きなあなたのために」」」」」


「陛下!」
 扉の向こう側から聞き慣れたロザリアの声が聞こえてきて、首を竦めた。
 声の調子にちょっとだけ怒ってる雰囲気。
 当たり前よね。
 だって今日は早起きしてから、一度だってロザリアと顔を合わせていないもの。……だから当然お仕事もそっちのけに
なっちゃってる。
 補佐官という立場のロザリアにしてみれば、怒って当然なんだけど……。
 こっそり溜息をついて、それから笑顔を浮かべて、静かに扉を開けて顔を出した。
「ロザリア!」
 扉の隙間から顔だけ出して、通り過ぎようとしていたロザリアを呼び止めたら、キッと恐い顔で振り返った。
 もとがすごく美人なだけに、すっごく迫力があって、一瞬息を飲んじゃった。
 すごく怒ってる顔してるからきっと怒鳴られちゃう。 でも、今日は黙って怒られるわけにはいかないの。
 だからロザリアがわたしに向かって怒る前に、急いで口を開いた。
「ごめんね、ロザリア。ずっとわたしを探してくれてたよね?」
「当たり前でしょう!! まったく、朝からお姿が見えないので心配しましたのよ、陛下。……そこでなにをなさっていらっ
しゃるんですの?」
 呆れたように溜息をついたロザリアが、怪訝そうに形の良い眉をひそめた。
「うん、あのね、こっちに来てくれる?」
「そちらに、ですか?」
 ロザリアが警戒したような声でそう問い返してきたのに笑顔で頷いた。
「みんなには内緒ね?」
 くすくす笑いながらそう言って、ロザリアを部屋に招き入れた。
「なんですの、みんなには内緒って……? まあっ!」
 部屋に入ったロザリアが驚いた声を上げて、びっくりした顔でわたしを振り返った。
「あの…………陛下? これは?」
「ダメよ、ロザリア」
 悪戯っぽく笑って唇に指を押し当ててみせる。
「今日は陛下じゃダメなの。ちゃんと前みたいにアンジェリークって呼んでくれなくちゃ」
 困惑を隠しきれないロザリアを手招いて、椅子に座ってもらった。
 用意したティーカップに紅茶を注ぐ。
 そしてケーキ皿に切り分けたお菓子を乗せた。
「今日はね、ホワイトデーなのよ」
「……知っておりますわ」
「もうっ、ロザリア、敬語もなしなんだから。
 でね。本当はバレンタインデーにしたかったんだけどね、忙しくてそれどころじゃなかったのと、わたしが忘れちゃって
いたから。だから今日なの」
「……判らないわよ、アンジェリーク?」
「お返しの日よ。
 大好きな気持ちをくれるロザリアに、大好きを返す日なの。喜んでほしくて早起きして頑張ったの。
 久しぶりだから美味しいかどうかは保障できないけれど、……食べてね。ロザリアの大好きなシャルロットポワールよ」
「適わないわね、あんたには」
 呆れた一言。でも顔は笑っていて、それが嬉しくてわたしもにっこりと微笑んだ。
「いただくわ。アンジェリーク……ありがとう。わたくし今日のこの日を絶対に忘れないわ」
 綺麗に綺麗に笑ってくれたから、わたしも自然に笑顔が零れた。


 季節外れのフルーツを、あなたにばれないように買うのは結構大変だったの。
 でも喜んでほしかったから。
 大好きなロザリアの、大好きなお菓子。
 朝から心配させちゃって、……ごめんね。

 大好きな守護聖たちにも内緒の、女の子だけの特別なホワイトデー。
 内緒のお茶会。
 ねぇ、ロザリア、また一緒にお茶を飲もうね!


                   END

まどか様に戴いたホワイトデー創作です。もう、すごく素敵。流石はリモを愛する者同士よね。ツボを心得てるわ。本当に
ありがとうございました〜。