ハロウィン
| 「とりっく おあ とりーと?!」 セレストが帰宅するなり、迎え入れたのは、大魔法使い気取りの格好をしたちっちゃな王子、カナンだった。お出迎えの言葉は舌っ足らずではあるが、ハロウィンのお約束の言葉、だ。 「ハロウィン気取りですか?」 「そうだ。さぁ、おやつを寄越せ!」 小さいながらも、大きく胸を張るカナンにセレストは買ってきておいたチーズケーキを取り出した。 「これは僕のごはんだろう?」 「お菓子には違いないでしょう?」 「ごまかされるのは嫌だ」 「……でも、これ以外にお菓子は持っていませんから、いたずらですか……?」 ちっちゃい王子を養っている身分ではあまり裕福でない台所事情だ。かといって、いたずらは困る。…小さくても、この王子様は破壊力抜群なのだ。 「もう一度、言ってやる」 「……わかりました」 なるべく被害が少ないほうがいいなぁと思いつつ、セレストはカナンの口から、ハロウィンのお約束の言葉を待つ。だが、カナンの口から出たのは……。 「とりっく おあ セレスト!」 「は?」 微妙に言葉が違う。きょとんとしていると、カナンはなぜか、堂々と胸を張る。 「お菓子もいいが、お前は最近働いてばかりで、僕の相手をしてくれないだろう? だから、お菓子よりもお前がいい。くれなきゃ、暴れるぞ?」 「カナン様……」 すっかり趣旨を履き違えている気がするが、この小さな王子の望むことのなんと愛らしいことだろう。生活のためにバイトをしていたとはいえ、ずいぶんと寂しい思いをさせていたのも事実だ。 「判りました。存分に堪能してくださいますか?」 「もちろんだ!」 手を差し伸べると、嬉しそうにつかまってくる。ぎゅっと抱きつくといったほうが性格かもしれない。そんなかわいいしぐさに、セレストも笑顔をこぼした。 |
ちっちゃはカナンより素直で書きやすいw
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