僕らの冒険



 待っていたって、始まらない。目の前に道は無限に広がっている。その気持ちは止められない。冒険者になるという夢。それがどんなに辛いたびであったとしても。
「僕の人生だからな。僕の道は僕が決める」
 王宮という籠の中にいつまでもいる気はないんだ…と笑うカナンに、セレストはため息をつく。多分、何度言葉を交わしても、これは堂々巡りにしか過ぎなくて。
「やりたいことはもう決まっている。目の前にあるんだ。それを手放すほど、僕は我慢強くもない」
 まっすぐな瞳。外の世界に飛び出すと言うことは、それまでの強さを持つこと。それだけの覚悟もあるということ、だ。
「人生そのものが冒険のようなものだろ?」
 悪びれもなく笑う。自分で選んだ道なのだから、と。
「まぁ、お前がその気になるか、僕が出て行くのが先か、だな」
「……私が説得できるとはお考えにならないんですか?」
「僕が素直に聞くとでも?」
 きらきら輝く瞳。その先が映し出すのは無限の未来。多分、この光を封じることはできない。うすうすはリグナムも気づいていて。さりげなく、セレストにプレッシャーをかけてくれるのだ。カナンを頼む、と。どこまでも弟に甘いらしい。肝心のリグナムの従者兼直属の上司は面白がっている様子。お前の人生だろう?と。確かにこれから先はカナンの人生であり、自分の人生であるのかもしれないけれど。騎士でない自分、従者でない自分をまだ想像できない。カナンを一人旅出させてしまえば、騎士としての自分は残るけれど、心に大きな穴が開くだろう。騎士になったのは父の背中を追ったから。そして、カナンの側にいてやりたいと思っていた自分がいたから。
(この方といること自体が、俺にとっては冒険なのかもしれないな……)
 何が起こるかわからないというのは不安であり、楽しいことである。…苦労をかけさせられてばかり入るけれど。それでも、カナンの側にいたいと思うのだから。
「僕らの冒険はこれからだから、な」
「……複数形ですか」
 微苦笑を浮かべつつも、それでも、愛しいと思う。いつまでも末期のままなのだろうな、とセレストは思うしかなかった。


友人と勇者シリーズ合宿(笑)して、カラオケで「僕らの冒険(アドベンチャー)」を歌ったら、不意に書きたくなったんです。
勇者シリーズのOPタイトルは王子で使ってみたいものがちらほら。「太陽の翼」とか、「風の未来へ」とか。(…すみません)
他のアニメの曲では、PAPUWAの主題歌の「旅人」がカナンっぽいなぁ。いつか書きたい。

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