にゃんにゃんとわんわん



 恋人を動物に例えるなら、にゃんにゃんだと常々セレストは思う。気まぐれで、甘えたかと思えば、そっけない。プライドも高くて、それに見合うくらいに魅力的で。だからこそ、愛しくてたまらないのだが。そのことを当の恋人にはなしてみると、少しばかりムッとしたような顔で見上げてきて。
「そういうお前は大型わんわんじゃないか」
 そんなことも言われたりするのだが、あいにくと言うべきか、セレストにはある程度、その自覚があるわけで。指摘されたところで痛くも痒くもなかった。
「むぅ」
 苦笑するだけで、あっさりと流してしまう恋人に何を思ったのか、カナンはセレストの胸に飛込んだ。
「カナン様?」
「にゃんにゃんは家につくんだろう? つまりはいごこちのいい場所、にだ。にゃんにゃんの行動に従ったまでだ」
 何とも理屈にかなっているようで、かなっていないにゃんにゃんきどりの恋人をセレストは腕の中に閉じ込める。
「じゃあ、わんわんは人につくんですよ。あ、でも、今のカナン様はにゃんにゃんですから、意味はないですかね」
「むぅ…」
 ちょっと意地悪な意趣返しにカナンはムッとした顔でセレストを見上げる。
「にゃんにゃん気取りだから、発情期もオプションでつけてやろうと思ったのに……」
「カ、カナン様!」
 いきなり、何を言い出すのかと慌てるセレストにカナンはにっこりと笑う。
「安心しろ、僕は人間だしな」
 そう言って、セレストの背中に腕を回す。
「いちゃいちゃしたければ、僕はちゃんとそれを表すからな」
 にっこりと鮮やかな笑顔で。そんな封に言われたら、セレストも白旗を揚げるしかない。
「そうですね。私も人間ですから。好きな人にはいつだって触れていたいです」
「だろう?」
 にゃんにゃんなイメージもわんわんのイメージも。それはあくまでもイメージでしかなくて。結局はあまあまな恋人同士でしかないのだから。
「僕たちは人間でよかったな」
「そうですね」
 甘いキスを交し合う二人の姿はやはり人間のものでしかなかった。


にゃんにゃんとわんわんの馬鹿っプル…ですよね。結局。