Morning

 朝、起きたら、一番最初に目に入ったのはキラキラした絹糸のような金の髪が目に入った。はっきりしない意識が一気に浮上がした。側にいたのは、幼い頃から仕えている主君であった。
「は……?」
 セレストの思考が硬直する。昨日は具合が悪くて、眩暈がきつかったため、カナンの側に上がることを辞した。上司であるアルネストがよく効くという薬を分けてくれた。
「最近、疲れ気味のようだからな……」
 それはどういう意味なのかを聞いてみたいが、とても怖い。穏やかでにこやかな笑顔の下に何が潜んでいるというのか。直属の上司でありながら、今だにこの人を理解できないセレストだった。
「ありがとうございます」
 ありがたくいただいて、食後に飲んでから、ベッドに入った。そこからの記憶はない。少なくとも主君であるカナンをベッドに引きずり込むなんて真似をセレストができるはずがない。
「ん〜」
 狭いベッドの中である。セレストが目覚めて、慌てふためいていれば、当然、同じベッドの中のカナンにも動きは通じる。
「ああ、もう朝か……」
「カナン様……?」
 そう言いながら、眠そうに欠伸するカナン。セレストと違い、落ち着き払っている。
「どうした、青くなって。体調はまだよくなってないのか?」
「あなたがそれをいいますか……?」
 ガクッとセレストが肩を落とす。
「あなたがどうしてここで寝てたんですか……」
 昨日は側に上がれないと連絡をしていたはずだ。体調が本調子でないことくらいは理解してくれているはずだ。
「お前が体調が悪いと聞いて、見舞いに来たら、ぐっすりと寝ていたんでな。寝顔を見てたら、もっと見たくなってベッドに入り込んだんだ」
「あなたって人は……」
 呆れて何も言えなくなる。
「何だ、その顔は。何か不満か?」
「いや、ご心配おかけしてすみません……」
 心配をさせてしまったのは申し訳ない。素直に謝罪の言葉を口にすると、カナンは鷹揚に頷いた。
「ああ、気にするな。薬がよく効いた事も確認で来たしな」
「は?」
 嫌な予感がする。カナンはにこやかに言葉を続けた。
「サメライ屋の主人に分けて頂いた漢方薬だ。僕からだと言うと、怪しんで飲まないだろうから、アルネスト経由で渡したら飲んだだろう?」
「あなたってひとは……」
 ここは叱るべきなのか、それとも体調が戻ったことに対して、礼を述べるべきなのか、暫し悩むセレストであった。


いや、病院で出された薬があまりにも効いて、寝すぎてしまったがために思いついたネタ。転んでもただではおきませんw

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