きらきら。
 儚くて、脆くて、短い、人間の生命。たゆたう小舟のようにすら見える。
 きらきら。
 それなのに、精一杯生きようとしている。力で劣ることを解っているはずなのに、諦めようとしない。
 きらきら。
 それを愚かだと笑うことも出来ただろう。けれど、それは俺の心に確実に焼き付いた。儚くも、脆く。それでいて、至上の美しさを誇り……。
 きらきら。
 それは一筋の光となって、俺の心に強く焼き付いた。それは600年もの間に、俺の中に刻印のように……。


 ヒライナガオでの冒険の冒険が終わり、ルーキウス王国に帰国した直後のセレストは、事後処理や不在中にたまっていた雑務等の処理に追われていた。忙しい日々が終わり、セレストにようやく時間がとれた頃、、カナンは一生に何度目かの願いをセレストに申し出た。
「ロイさんに、ですね……」
 半ば予想はついていたことだから、セレストは驚きはしない。カナンはうなずいて、言葉を続けた。
「今回のことはロイにも伝える義務があると思うんだ……」
 ロイにとって見れば、どれも堕ちたる天使が分かれたものにすぎない。言うまでもなく、敵だ。いい感情を持つはずがないことはわかっている。だが、カナンやセレストが実際に接したエルダーはその言葉だけで片付けられる存在ではなかった。ロードライトに辛勝することができたのは、紛れもなくエルダーの意思によるもの。彼は他の天使とは一緒にはできない存在なのだ、と。
「信じてくれないかもしれない。でも、ルーシャス様たちの魂を綺麗だと言ってくれたエルダーの言葉に嘘はない、と僕は信じたい……」
「そう、ですね……」
 二人にしてみれば、どうあったって、彼を敵視する理由なども見付からない。
「少なくとも、あの人はあの二人とは違う道を歩いてくれています。多分、これからも……」
「それは僕達次第だということだな……」
 彼が人の魂の輝きを信じてくれているならば、それに見合うだけの生き方を人間は見せる義務がある。
「僕達はそうであれるだろうか……」
 そう呟いたカナンの横顔は大人びていて、セレストはかけるべき言葉を見い出せなかった。
「そういうわけだ、セレスト。付き合ってくれるな」
 カナンのその問いかけは疑問系でなく、確認系。セレストにそれを否定する理由はひとつもなかった。


 いつものごとく、唐突に現れた二人をロイは快く迎えいれてくれた。
「今回の冒険も無事で終わったんだな……。大変だったな」
 その言葉に胸が痛む。労ってくれるその言葉は本心からのものだから。それを裏切るようなことを今から言わなければならないのだから。
「ロイ、今回の件はいろいろあったが……。ウルネリスの残りに天使が、この国に依然現れた二人が一枚噛んでいた」
 それでも、告げなければならない。そう決めたことだ。カナンは重い口をゆっくりと開いた。

コレも前からの自分への宿題だったりします。がんばる

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