Heart Warm
いつものようにセレストはおやつとお茶を手にカナンの部屋へ参上する。 「カナン様、失礼します」 「ああ。入ってくれ」 今日は無断外出がなかったようで、ホッと内心でため息をつく。好奇心が旺盛すぎる主に胃が痛い思いを毎日している身と しては、そんなささやかなことでもありがたいと感じてしまう。ものすごく、悲しい話だが。 「今日は寒いですからね。ぜんざいだそうです」 「それは渋いな」 「あと、口直しに昆布と緑茶もありますよ」 ぬくぬくのぜんざいと入れたての熱いお茶をテーブルの上に置くと、カナンは上手にお箸を使ってぜんざいを食べ始めた。 「うん。上手い。ゴローのところで食べたのよりはちょっと甘いけどな」 「いつ、食べたんですか?」 「それは企業秘密というものだ」 あまり表立っていえない、秘密の行動中に出来た共通の知人の名が出て、セレストは頭を抱えたくなる。ぜんざいなんて、 たいてい冬に食べるもの。つまり、ここ最近食べたということなのだから。 「あんまり、悩むな。胃に穴が開くぞ」 「誰のせいですか……」 「まぁまぁ」 お説教を聴かない振りをして、甘いぜんざいを堪能していると、ふとセレストの手の血色がかなり悪いことに気づく。 「どうした。その手は」 「え?」 「血色がえらく悪い」 そういって、カナンがその手に触れてみると、かなり冷たい。 「何で、こんなに冷たい?!」 「何でと申されましても……。って、いきなり、手を握らないでください」 握られてらいるほうのセレストは自分の手が冷たいとは自覚なかったらしく、カナンの手でようやく自覚したようだ。 「今日は午前中は野外で訓練でしたしね。そのせいですよ」 「そうか? おまえの手って、結構いつもひんやりしてるぞ」 「そうですか?」 「ああ。そうだ」 自分では気づいていないのだなぁ…と何故か感心する。だが、すぐにカナンの頬が紅潮した。 「カナン様、どうされました?」 「な、なんでもない!」 セレストの手の冷たさを実感するのは当然、セレストに触れられている時で。そういう状況の時といえば、今は思い出すと、 互いに気まずすぎるものである。つまりは夜の褥の中と言うべきところで……。 (お、思い出すな、僕〜) 紅潮する頬を覚まそうと首を振るが、目を回しそうになる。すると、冷たいてがか何の頬を包み込んだ。 「セ、セレスト?」 「冷たいから、ちょうどいいかと」 どうして、こうタイミングよく(悪く)行動に移るのか。わざとだとちょっぷものだが、当人は至って天然。責めることなど出来る はずがない。こうなったら、話題をそらすしかない。 「あの言葉は本当なのかな……」 「何がです?」 「手の冷たい人は心が温かいとか言う奴だ……」 「どう思われます?」 そんなこと、いわれなくったて、答えは一つだ。 「内緒、だ」 そう告げると、うつむいてしまうカナンにセレストは穏やかな笑みを浮かべる。それがなんだか癪だけれども、その笑顔が やっぱり好きだと思ってしまうカナンであった。 |
オンリーで配ったペーパーに載せた創作です。これ、裏も書きたいなぁ……。
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