ケーキ談義

「焼きりんごって美味しいよねぇ〜」
「アップルパイもいいな。タルトタタンも〜」
「アップルグラッセもいいよね〜」
 喫茶店でケーキをついばみながら、天地は目の前の一つ年上の少女との会話を楽しんでいた。大好きな甘いものについて、大好きな人と語り合えるのはとても楽しい。
「はるひちゃんのお勧めの新作も美味しかったの〜」
「ぼくはそれよりは〜。先輩はわかってないって」
「え〜。そうかな」
 そんな会話の中、ふと、少女は天地のケーキに目を向ける。
「それ、美味しそうだね。一口いい?」
「え?」
「だめ?」
 天地が戸惑うと、小首をかしげて駄目なの?と。そんな可愛い仕種を無視できるはずがなく。
「いいよ。はい」
「ありがとう。うん、美味しい〜」
 幸福そうに食べてくれるから。
「はい、天地くんもどうぞ」
「……先輩さぁ?」
「何?」
 何てあどけないんだろうと思う。そして、鈍感である。天地の葛藤にも気づいていないのだ。
(これって、間接キス、だよ?)
 いってやりたくて、喉元まで出掛かるけれど。あの時の偶然の出会いのキスを覚えていない彼女には通じないのかもしれない。そんな、諦め。
「いただきます。ん、ほんとだ、美味しい」
「でしょう?」
 ケーキは甘いけれど、心はどこかほろ苦いと。天地は思った。



天地くん大好きvvv 猫みたいなとこがいいvvv でも、主人公があれだからかわいそう。
そんな思いで書いた記憶が(笑)

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