最近の若者事情
バレンタインデーというものはいつだって男子がそわそわするものである。 (格好悪い、とは思うけど……。でも、ほら、恋人になって初めてのバレンタインだし……。去年はあんなんだったし……) 待ち合わせの喫茶店で彼女を待ちながら、瑛はガラス越しに髪型を機にしてみたりする。今日はバレンタインデーと言うこともあり店の中はカップルだけだ。 「俺、ホットケーキ〜」 「バレンタインスペシャルだって、よかったね、琉夏くん」 はばたき学園の制服を着たカップルらしい二人がキャッキャッと甘いものをつついている。去年までの自分たちもあんな風に見えていたのだろうか…と考えると、ちょっといたたまれない。何せ、鈍感な彼女を相手におまえ等まだつきあってなかったのか?と、針谷から何度から代われたことか。 (い、いやいや。もう、俺たちつきあってるし……。しかし、あっちの男の方の金髪……。はば学って氷上のイトコで、厳しい先生がいるって話じゃなかったのか?) そんなことを考えていると……。 「ね、そっちのケーキ一口だけ! ね、俺のホットケーキもあげるから」 「いいよ。切りわけるから、ちょっと待ってね」 「え〜。食べさせて? ね? あーん」 「ちょ、琉夏くん!」 砂をはきそうな、いたたまれない気持ちになる。とりあえず、コーヒーを飲んでしまって、苦さで中和してしまおうと思う。 「ごめん、瑛くん!」 そんなことを考えていたら、ようやく待ち人が現れて。 「遅いんだよ、おまえは……」 「ごめん……」 「かわいく言ったら許す」 「ん〜。ごめん、ね?」 上目遣いで小首を傾げて。精一杯の誠意を見せてるらしい姿。 「ん、許す」 「もう……」 少し拗ねた顔もかわいいなんて照れるから絶対に言わない。それがオレ流…な、瑛である。そんな会話をしている間にも近くの席のはば学カップルは砂をはきそうな空気を周囲にまき散らしている。 「ね、俺のホットケーキも食べて、あーん」 「え〜。恥ずかしいよ〜」 「大丈夫、俺は恥ずかしくないし、ほら」 たぶん相手の少女と周りがいたたまれないが、男子の方は機にしていないようだ。 「……。最近の高校生ってすごいねぇ」 「俺ら、一年前ってああじゃなかったよな?」 「だねぇ……」 やはり唖然とする彼女に自分の感覚は間違ってなかったと照は安心する。 「瑛くんもああいうのって、やってみたい?」 「おまえな〜」 「いや、素朴な疑問?」 とりあえずはチョップを一つ落とす。 「いたーい。男の子的にはどうかなって思ったのに〜」 「少なくとも、ここでは無理だろ」 「……じゃあ、二人だけなら?」 「……ちょっと、考えてもいい」 「チョコレートケーキ作ったんだけど?」 持ってきた荷物の一つを差し出して、上目遣いで聞いてくる。 「コーヒー入れてやる」 「うん♪」 嬉しそうに笑うその笑顔。たぶん、それが欲しかったもの、だ。 |
去年のバレンタインの話と微妙にかぶってる気がしたorz すみません。
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