11月22日
いつだって、この王子様の言葉は唐突だ。
「11月22日は『いい夫婦』の日だそうだ」
「いい夫婦、ですか?」
「ああ、語呂合わせでな」
「なるほどって、どうして、カナン様がそのようなことを……」
あまりにも俗世間過ぎる話題を王族であるこの主君が知っているのはどうしたものだろうかとは思う。
「あまり気にするな」
「気にしますよ……」
ため息をつく従者に主君はあっけらかんとしたものである。
「そういうわけだ! セレスト、これから僕に付き合え!」
「どうして、そうなるんですか?!」
セレストのつっこみも虚しく、カナンは手早くお忍びルックに着替えてしまう。
「だって、夫婦とは人生のパートナーだぞ? 僕たちは夫婦でこそはないが、パートナー動詞ではあるだろう?」
「……」
…まぁ、否定はしない。深い絆で結ばれているとは信じてはいる。だからと言って、この言葉はどうなのだろうか。
「だって、この時期、僕たちの間にある記念日ってのはないじゃないか」
「そうですか?」
「そうだ!」
ぷいと顔を背けるカナンはどこかすねているようにも感じられる。
「とうへんぼく!」
「それはあまりな……」
「記念日デートというものもできないのはどうかと思うが?」
「記念日デートは記念日だからできることで……」
なんだか、話がずれている気がする。けれど、確かにわかることはあって。
「……つまり、私とデートをしたいと?」
「……それくらい、察しろ」
そう言いきると、カナンは窓から飛び降りる準備に入ろうとする。セレストは慌ててそれを制した。
「……何をする!」
「危ないですよ! デートなら、お部屋デートもありえるでしょう?」
「どこの恋愛ゲームの話だ!」
「……どこのって? あるんですか?」
「しらん!」
すっかり話の方向性がずれてしまっている。
「もういい。気が抜けた……」
「……じゃあ、カナン様。私の午後は有給にして置いてくださいね?」
「…?」
「お部屋デートでしょう?」
「馬鹿者」
ずれた話の方向性は戻す気がないらしい従者は恋人へと。それがなんだか悔しい気がして、カナンはセレストに
ちょっぷを送った。
サイトが4周年なので、記念になるものを…と思ったら、いい夫婦の日なので。こういう話をと。あかんやん……。