僕の欲しいもの



「いい子にしていると、朝になったらこの靴下の中にプレゼントを入れてもらえるのよ」
「これじゃだめです」
 そう言って、姉のリナリアが差し出してくれた靴下を受け取ることを拒否したのは幼い日のカナンだった。
「あら、いらないの?」
「いえ、これじゃ大きさが足りないんです。もっと、大きな靴下が欲しいんです」
 精一杯手を広げて、大きな靴下が欲しいのだと主張するカナン。
「一体、カナンはどんなプレゼントが欲しいんだい?」
「それは……」
 リグナムの問いかけにカナンが答えようとしたが、それは途中で止まる。そんな中、学校が終わったばかりの
セレストがいつものようにカナンの元にやってきたからだ。
「セレスト!」
 途端に嬉しそうにセレストの元に駆け寄るカナンの姿にリナリアは納得したように笑った。
「ああ、そうね。カナンはセレストが欲しいのね〜」
 ころころと笑うリナリアにリグナムはああそうか、と納得する。
「さすが、姉上。お分かりになるんですか?!」
「あ、あの、何の話ですか?」
 話が飲み込めないままにセレストは事の成り行きの説明を求める。
「クリスマスプレゼントとしてカナンが欲しいものは、クリスマスに一緒にセレストと遊びたいってことだよ」
 わかってしまえば造作もないこと。リグナムはセレストにそう説明する。
「私と、ですか……?」
「だって、セレストは学校があるから、朝から僕とは遊んでくれないじゃないか。クリスマスくらい、いいだろう? 
いい子にしていれば、プレゼントをもらえるんだろう?」
 セレストと一緒に遊べるプレゼントが欲しい。だから、こんなに小さな靴下じゃ間に合わない。
「……じゃあ、父上にお願いしてもらうように頼むといい。願いが届いたら、父上からの書状が届くはずだよ」
「はい!」
 リグナムの言葉にカナンは嬉しそうに笑う。リグナムは軽く目配せをして、セレストにカナンの小さな願いを叶えて
やるようにと伝えると、セレストも照れくさそうに頷いた。
 その年のクリスマスには朝から嬉しそうに遊ぶカナンとそれに付き合うセレストの姿が見られたことは言うまでも
ないことだった。


 少しばかり色があせた靴下を見つけたのはなぜだかクリスマスイヴ前日で。
「なんだかなぁ……」
 今はもうクリスマスのからくりを知ってしまったけれど。あの時は本当にクリスマスに感謝したのだ。
「今年のクリスマスはなんて願ってやろうかな?」
 叶えてくれるのはサンタクロースではなく、青い髪の従者だ。一番欲しいものは何も変わっていないことに彼は
気づいているだろうか。そんなことを考えて、カナンはくすりと笑った。


クリスマス創作…です。ほのぼの…な感じですねw