青と緑

 ちょこちょこ。小さな王子様、カナンの動きを擬音で表すなら、まさにこれだろう。10センチサイズの小さな体。けれど、
それには有り余るほどの好奇心と行動力を持っている。
「セレスト〜」
 舌っ足らずに呼ばれるのにもなれた今日この頃。この小さな王子様が次に何をやらかすのか、不安半分、期待半分の
大きな従者(ちっちゃ王子視点)であった。
「どうだ、おまえには特別に見せてやるからな」
「ありがとうございます」
 自分の体ほどもある幻獣を召喚したカナンは得意気に胸を張る。幻獣の召喚は高度な魔力と素質を必要とする。この
小さな王子様はどちらも持ち合わせているようだ。ダンジョンで腕を上げているのは伊達ではないらしい。一方、鮮やかな
ブルーの色をした幻獣は脳天気に召喚主にすりよっている。ほぼ、大きさの変わらないふたり(?)の組み合わせは、ある
意味可愛らしく、ある意味シュールかも知れない。
「そう言えば、こいつの色はセレストの髪とお揃いだな」
「そうですか?」
「うん。綺麗な青だ。ちょっと羨ましいぞ」
 むぅ、と少しばかりすねて見せるカナンにセレストは微苦笑を浮かべた。
「カナン様も綺麗な青の瞳をお持ちでしょう?」
「でも、セレストの髪の色の方が綺麗だ」
 …らちがあかない。仕方ないので、セレストは提案にのりだした。
「じゃあ、交換しますか」
「こうかん?」
「ええ。カナン様の青と私の青を」
 出来るわけはないけれど。言うだけはただである。だが、カナンはきっぱりと言った。
「いらん」
 いっそ、清々しいほどの即答。
「いらない、ですか……」
「だって、セレストの色だから。交換したら、今度はそっちが欲しくなる。だから、いらん」
「はぁ……」
 よくはわからないが、彼なりのこだわりらしい。なんだか、かわいらしくて、セレストは笑みをこぼした。
「僕はセレストの色だから、大好きなんだからな」
 最強の殺し文句かもしれない。無邪気に告げるカナンに何よりのいとしさを感じた。


幻獣の色はセレストの髪の色。ただ、それだけの話です。ちっちゃ大好き。

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